社会

遠い地で思う古里 ぬくもり届ける キャンドルアーティスト・今野千夏さん 震災で移住、読谷に出店

東京電力福島第1原発の事故後、福島県から移住して店をオープンさせた今野千夏さん=9日、読谷村長浜の「Peace Spring Arts」

 8年前の東京電力福島第1原発事故で、人生も考え方も一変した。「一生を過ごす」と決めていた福島県いわき市を離れ、読谷村に移住したキャンドルアーティストの今野千夏さん(41)。東日本大震災と原発事故で「人と人のつながりが、どれほど大切か気付いた」。古里の再生を願いながら、手作りキャンドルでぬくもりを届ける。

 「このまま死ぬんだ」。2011年3月11日、震度6弱の地震がいわき市を襲った。揺れの中で今野さんは死を覚悟した。同市の一部は福島第1原発から30キロ圏内。「原発、危ないんじゃないか…」。翌日、1号機の建屋が爆発し、懸念は現実となる。

 事故から2、3カ月たっても、自宅の放射線量測定器は警告音を鳴らし続けた。事故収束のめども立たない。「空気を吸うのも、水を飲むのも怖い」。11年夏、今野さんは原発のない沖縄に移住した。

 15年6月、読谷村長浜にキャンドルとマッサージの店「Peace Spring Arts」を共同でオープンさせた。店舗名には「平和があふれるように」との願いを込めた。震災を経験し「当たり前のことは何一つない。一分一秒が奇跡。自然と命を大切にしたい」と思ったからだ。

 毎年3月が近づくと、心が落ち着かないという。テレビの「震災報道」を目にすると鳥肌が立つ。怖さもある。「3月11日を1人で過ごすのは嫌」。あの事故を経験し、つながりの大切さを強く実感した。

 それだけに、古里の状況に心が痛む。「原発事故で人と人の心が切れてしまった。同じ地域の中でも分断されている。時間がかかると思うけど、つながりが元に戻ってほしい」

 今野さんのキャンドルは人工香料を一切使っていない。ブーゲンビリアやミモザを入れた作品もある。ブランド名は「nukumi candle」。古里から遠く離れた沖縄で、ぬくもりをともし続ける。
 (真崎裕史)