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祖父の名に県系意識 イヴァン・オブリさん 沖縄県系3世 「町の開拓者」子孫に誇り【ニューカレドニアの「日本人」】

自宅の庭で妻ロベルタさんと笑顔を見せるイヴァン・オブリさん=4月、ニューカレドニアのポワンデミエ

 ニューカレドニアの首都ヌメアから車で4時間、フランスパンのような本島の北東にポワンデミエという東海岸で一番大きな町がある。人口は5千人余り。雨が多く山が海岸沿いまで迫っている地域だ。イヴァン・オブリさん(63)はこの町の海を見下ろす丘に住む沖縄県系3世だ。

 名護市出身の祖父の名前は新城喜吉。しかしイヴァンさんが「アラグスク・キキチ」という呼称に親しみを感じ、県系を意識するようになったのはこの10年ほどのことだ。

 祖父の話をしたことがなかった母親のカナさんが祖父との別れの場面を目に浮かぶように語るのを驚きと喜びで聞いた。カナさんは淡々とよどみなく父親のことや自分の思いを語り、昨年他界した。イヴァンさんは自分が沖縄と深くつながっていると実感した。

 イヴァンさんはエネルカルという電力会社で技師として勤め、2015年に退職。11~12年は県人会の会長職を引き受けた。県系人が多いこの地にしっかりと根を下ろしている様が見てとれる。地元では沖縄出身者として知られるようになったことに誇りを感じているという。

 イヴァンさんにはもう一つの誇りがある。それは父方がこの町を開拓した自由入植者の子孫という点だ。流刑地として始まったニューカレドニアの入植の歴史において、ポワンデミエは特別な場所だ。新天地での成功を夢見てフランスから渡ってきた一般人の自由入植の地だったのだ。

 その上、ポワンデミエでは入植者とメラネシア人の混血も多く、メラネシア人は親族の一部になっている。それだけに土地への思い入れは強い。1980年代に独立運動が起こり、オブリ家も先住民に父の土地を二束三文で譲らざるを得なかった。それでもこの地にとどまった。

 山々から流れ出る幾つもの川のうっそうとした谷あいにメラネシア人の集落が点々とある。イヴァンさんはすっかり草ぼうぼうになった先祖の土地を案内しながら言った。「いつかこの土地が地元の繁栄のために有効利用されることが私の夢だ」

 現在イヴァンさんは地元の小学校を退職した妻ロベルタさん(63)と悠々自適な生活を送る。園芸が趣味の2人が丹精込めて作り上げた庭は素晴らしい。この国の歴史の一端を生きながらもカレドニア人は日々の楽しみを忘れない。 

 (山田由美子、ニューカレドニア通信員)