「15年後には公共交通機関の役割を果たせなくなる」 沖縄のバス4社に広がる危機感 若手運転手の確保が最大の課題


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 深刻化するバスの運転手不足を解消するため、路線バスを運行する県内4社は新規就労者を支援する取り組みを実施し、運転手確保に努めている。数年前から大型二種免許の取得費用を一時的に立て替える制度を導入し、希望者が就職しやすい環境を整える。雇用延長や正社員登用などの制度を活用し、人手不足を緩和しつつ運転手が長期間、安定的に働ける仕組みづくりを進めている。

バス運転手の指導を受けながらバスの運転に挑戦するセミナーの参加者=29日、豊見城市

 大型二種免許の取得費用は最大で40万円ほどかかる。バス運転手以外の業種でも人手不足が進む中で「免許の保持」を採用条件にすると、採用試験の受験者が集まりにくいという。各社は免許取得の段階から「養成社員」「養成運転手」の名目で運転手候補者を採用している。免許の取得費用を一時的に貸し付け、運転手として働き始めた後に毎月一定額を返済させる仕組みを導入している。

 3年や5年など一定期間勤務すると報奨金などとして20~30万円を支給し、実質的に免許取得費用を軽減している。

 警察庁の「運転免許統計」によると、2018年末の県内の大型二種免許保持者は2万1537人いるが、このうち1万7074人(79%)は50歳以上となっている。各社は長期間、安定的にバスを運行するため若手運転手の採用を目指しているが、大型二種免許を持つ若年者は少ない。

 県バス協会によると加盟社の運転手の平均年齢は50歳以上で、各社とも「15年後には公共交通機関の役割を果たせなくなる」と危機感がある。免許取得費用の補助は人員の確保に加え、若年層の雇用確保の側面もある。

 各社が施策を進めているが、現状では運転手不足の根本的な解決には至っていない。ある路線バス会社の担当者は「免許取得費用を補助して採用しても、定年退職者の穴を埋めるのがやっとで、増員には至っていない」と明かす。

 観光客の増加で県外からの参入を含めて貸し切りバス専門の会社が増加しており、運転手の引き抜きも起きているという。「民間の企業努力だけでは限界がある。行政にはさらに積極的な支援をお願いしたい」と訴えた。

 (外間愛也)