県民の台所と呼ばれ、今では県内屈指の観光地でもある那覇市の第一牧志公設市場。老朽化のため、現在地での建て替えられることになりました。現在の建物での営業は6月16日で終了し、7月1日から約3年間の仮設市場での営業を経て、2022年に新しい市場が完成する予定です。市場の歴史と現在の市場の様子を琉球新報の記事と写真で紹介します。
戦後の闇市から
第一牧志公設市場は1947年頃、現在の開南バス停付近を中心に形成された闇市が始まりです。48年に那覇市が現在の第一牧志公設市場の場所に露天商人を集め、50年には廃材で建てたトタン屋根の牧志公設市場が開設しました。
そばを流れるガーブ川の氾濫で市場はたびたび浸水。69年には不審火で大火事に見舞われ、建物が焼失してしまいます。
近くにできた第二市場(7月から移転営業する仮設市場と同じ場所にありました)への移転を巡って対立もありましたが、1972年の沖縄の本土復帰の年に現在の市場が完成しました。
市場が再オープンして3年後には沖映通り(現在のジュンク堂書店那覇の場所)にダイエー(ダイナハ)がオープン。本土系の大型スーパーの進出で市場の人たちも警戒しましたが、公設市場には変わらずに多くの客が訪れました。
観光地化と持ち上げ制度
市場の観光地化が始まったのは80年代後半から90年代にかけて。1階の店舗で購入した魚や肉を2階で調理する「持ち上げ制度」の導入がきっかけのようです。各店舗で実施していた取り組みを組合で一律のルールを設けて導入しました。県内を訪れる観光客が那覇を素通りして北部に向かう現状に危機感を持った那覇市が、市内に観光資源をつくろうと提案したことが制度導入につながったとも言われています。
今では観光客の方が多く訪れる公設市場。持ち上げ制度は今でも大好評だそうです。
1階は食材、2階は食堂
市場の構造は47年前から変わりません。1階でまず目に入るのは色鮮やかな鮮魚です。グルクンや赤マチ、イラブチャーのほか夜光貝やエビ・カニ類まで取りそろえています。
精肉売り場には大きな肉の塊がたくさん。インパクトがあるのは豚の顔の皮であるちらがー。三枚肉やソーキはもちろん。豚足のてびちやちまぐ、モツにあたる中味まで。沖縄料理には欠かせない豚肉を中心に店頭に並びます。
精肉・鮮魚のほかには、かまぼこや漬け物、昆布、麺などの専門店がたくさん。漬け物は種類が豊富。昆布は乾燥ではなく、ゆがいたものを売っています。沖縄の行事に欠かせないスンシー(メンマ)も。
2階は食堂街になっています。吹き抜けの近くにはお土産の工芸品を売るお店も。この建物ができたばかりの頃は、洋裁店や電気店など、市場の従業員が利用する店が多く入居していました。
7月1日からは100メートル先の仮設市場に移転し、新たなスタートを切る第一牧志公設市場。今の場所に戻ってくるのは2022年になる予定です。 イベントなども予定しているようです。
沖縄の食文化を支え、つないでいく大切な場所。この機会に買い物をしに足を運んでみませんか?
記事:市場の人たちの物語を描いた連載のまちぐゎーあちねー物語はこちらから読めます
6月16日に現施設での営業が終わる那覇市第一牧志公設市場=2019年1月26日撮影 – Spherical Image – RICOH THETA
6月16日に現施設での営業が終わる那覇市第一牧志公設市場=2019年1月26日撮影 – Spherical Image – RICOH THETA