強制堕胎との闘い、差別や偏見への怒り 沖縄・ハンセン病元患者が書きためた俳句・短歌が歌集に


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平得壯市さんの句歌集「飛んで行きたや 沖縄愛楽園より」

 【名護】「羽あらば 飛んで行きたや 里の春」。ハンセン病元患者で名護市済井出の国立療養所「沖縄愛楽園」入所者の平得壯市さん(83)が、園での暮らしや結婚、子どもを題材に詠んだ俳句、短歌を集めた句歌集「飛んで行きたや 沖縄愛楽園より」を刊行した。16日から順次、全国の書店に並ぶ。平得さんは「(句歌集が)社会の皆さんがハンセン病への古い因習を乗り越えて、ハンセン病を正しく理解することにつながればうれしい」と語った。

 平得さんは1936年に与那国島で生まれた。13歳で発病し、51年に愛楽園に入所した。14歳で強制隔離されて以来、園での生活は約68年に及ぶ。

平得壯市さん

 「区切られし 十万坪の療園に 住みゆく一生 哀しむなかれ」。ハンセン病を患ったゆえの理不尽な扱い、差別と偏見への怒りや悲しみを創作活動にぶつけた。短歌は54年、俳句は61年ごろからノートに書きためてきた。

 句歌集は園で暮らさざるを得ない自身の思いや、園で出会った妻との日々をつづる。強制堕胎と闘い、守り抜いた子どもたちへの思いなど平得さんが書きためた約1700の句歌から俳句363句、短歌490首を掲載している。

 「飛んで行きたや」は1500円(税別)。書店のほか沖縄愛楽園交流会館でも販売する。問い合わせはコールサック社(電話)03(5944)3258。
 (佐野真慈)