【深掘り】沖縄県内バス減便の背景は? ダイヤ改正の名で実態は減便 運転手不足の要因に低賃金


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17日から減便する東陽バスの38番(志喜屋線)=12日午後、那覇市泉崎の那覇バスターミナル

 沖縄県内でバス運転手不足が深刻化する中、今年に入り路線バス4社がそろって減便することが明らかになった。バス会社や県、沖縄総合事務局は抜本的な対策の必要性を認識しながらも、運転手の待遇改善が進まない上、「ダイヤ改正」の表現が慣例化し「減便」を見えにくくしてきた実態もある。観光客が大幅に増える一方、沖縄の路線バスを取り巻く特殊事情も絡み、解決策は見いだせていない。

■ダイヤ変更の名で

 「変更が多い。ダイヤを減らすなら実態に即した表現を」。運転手不足を理由に17日から減便する東陽バスに対し、沖縄総合事務局陸運事務所はこう是正するよう“助言”していた。これを受け同社は「減便」と表記し、乗客に知らせた。

 東陽バスはこれまで「ダイヤ改正」として各路線の便数を減らしてきた。他社も同様に「ダイヤ改正」「ダイヤ変更」と利用者に周知していた。ただ、ダイヤの「改正」「変更」は時刻表の変更だけでなく、便数の変更、減便を伴うことが多いのが実情だ。

 琉球バス交通、那覇バスも3~4月に「ダイヤ改正」を実施し、同時に計6路線で減便もしていた。沖縄バスも今月7日、15日から6路線でダイヤを変更するとホームページの「お知らせ」で告知。運行回数に触れていないが、実態は土曜日曜、祝日の減便を伴っていた。既に減便となった路線の乗客も「ダイヤ改正だけだと思った。知らなかった」という声がほとんどだ。

■空前の好景気も

 運転手不足の大きな要因が待遇問題だ。バスや沖縄都市モノレールの労働者でつくる私鉄沖縄の喜屋武悟委員長は人手不足の解決には「人の命を預かる責任に見合った賃金など待遇改善しかない」と強調する。

 空前の好景気で給与も上昇傾向にある県内だが、バス運転手の初任給は15万円前後。公共交通として必要とされながらも、激しい交通渋滞や乗客からの苦情などでストレスも多い。

 そのため、路線バスと比べて賃金や待遇面がいい「貸し切りバス」の運転手に人材が流れる傾向もあるという。全国的に路線バスの運転手の担い手不足の中、沖縄は観光需要を取り込んだ“競合”に人が流れる事情もあり、問題に拍車を掛けている。

 県バス協会や県、国も対策に努めたい考えだが、バス各社の競争も激しく、足並みがそろわない状況だ。運転手を採用できず、待遇も改善しない「負のスパイラル」から抜け出せるか。早急な対策が求められている。
 (仲村良太)