運転手不足の深刻化で路線バスの減便が相次ぎ、利用者サービスに支障が出ている。県バス協会の会長に就いた小川吾吉氏に、バス事業の課題や協会の取り組みなどを聞いた。
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―バス利用の現状は。
「沖縄では昭和60年代に年間7千万人超がバスを利用していたのが、今は2700万人前後と3分の1に減っている。それでも『わったーバス党』の活動など県や沖縄総合事務局などの支援もあり、下げ止まるようになっている。沖縄はモノレールはあるが、やはりバスが公共交通の基幹だ。支援に応えられるよう業界のサービス向上に努める。観光客向けには4カ国語での電子掲示板表示やバスナビの対応をしていく」
―乗客が下げ止まっても、運転手不足による減便で輸送力が落ちる。
「バス運転手の有効求人倍率は3倍を超える。工事の運搬トラックや物流のドライバーなどと人の確保で競合がある。規制緩和に伴って参入が増える観光の貸し切りバスにも流れている。定年退職するドライバーを引き留めるなどしてどうにか対応している。人が不足する中で労基署からは長時間勤務を減らすよう指導があり苦慮している」
―バス路線が縮小していくことに危機感や不満を覚える県民の反応がある。
「そうした声は理解しているが、人手不足への対応を全国どこでも模索している状態だ。福岡市中心部の100円バスを走らせる西鉄でも、運転手不足で路線変更や減便をしている。宮崎交通は影響が大きい郊外の路線を維持するため、市街地で減便して運転手を回している。給料がいいからと人材が流れていた都バスでも運転手不足があるということで驚いている」
―打つ手はないのか。
「私の会社である第一交通グループでは、北海道の宗谷バスとの間で繁忙期に運転手とガイドを送り合う支援事業を進めている。他の地域や業種と連携して補っていくやり方だ。距離が短い路線の勤務で家庭とも両立できるようにするなどして、女性の運転手を増やしていくことも一つだ。水や電気と同じように、バスも公共のインフラであることをもっと周知していく必要もある」
―10月に沖縄都市モノレールの浦添延長部分が開業するが影響は。
「那覇市石嶺のバス営業所のそばにモノレールの駅ができるなど、重複するバス路線で乗客が減ることを懸念している。頭を抱えるところがあるとはいえ、モノレールの最終駅とバスとの乗り継ぎなど相乗効果を上げるような連携も検討していかないといけない」
―15年前のモノレール開業に際して、大手バス4社が乗り合い部門の統合を計画し、とん挫した。再び検討される可能性は。
「今のところそうした話は出ていない」
(聞き手 与那嶺松一郎)