DNA鑑定で身元判明の戦没者遺骨 県内収集は5件 全て県外兵士


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 厚生労働省が2003年から実施している戦没者遺骨のDNA鑑定を巡り、ことし3月末までに身元が判明した1149件のうち、沖縄県内で収集されたのは5件にとどまることが15日までに同省への取材で分かった。5件はいずれも県外出身の軍人で、身元が推測できる遺留品が残されていた。民間人で身元が判明したケースはなく、返還の道のりは厳しい。

狭い洞窟の中で、見つかった遺骨を確認する県平和祈念財団戦没者遺骨収集情報センターの中野修調査員(右)ら=2017年、八重瀬町具志頭

 厚労省によると、ことし3月末時点でDNA鑑定を実施したのは3262件で、判明し遺族に返還できたのは1149件。2011件は身元が判明せず、102件は鑑定中となっている。判明分の98・8%に当たる1135件は旧ソ連で見つかった。沖縄は5件、パプアニューギニア3件、硫黄島、占守島がそれぞれ2件、フィリピン、サイパンがそれぞれ1件にとどまる。

 沖縄を含む南方での特定が進まない理由に、厚労省は「高温多湿で遺骨の保存状態が悪く、DNAの損壊が激しいため鑑定に必要なDNAが十分に抽出できないケースが多い」としている。さらに、残された遺族も高齢となり、遺伝上遠い関係の親族しかいない場合もあるという。

 県内では10年度に那覇市真嘉比で見つかった千葉県の日本兵が1件目で、13年度に3件、17年度に1件の身元が特定され、遺族の元に返されている。鑑定は原則として、遺留品や埋葬者名簿など身元を推定できる場合しか行われていない。沖縄では16年度以降、那覇市真嘉比や浦添市経塚、糸満市米須など計10地域の遺骨を対象に、遺留品などがなくても鑑定をしている。

 沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」の具志堅隆松代表は「遺族が死亡場所を把握できていないことが多く、地域を限定するべきではない」と強調する。精度を上げるため、戦没者遺骨の鑑定を専門で行う施設の設置も必要だと訴えた。

 (前森智香子)