辺野古移設沖縄県の申し出却下も、沖縄県と政府が「想定内」とする理由


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国地方係争処理委員会に臨む富越和厚委員長(中央)ら=17日、総務省

 名護市辺野古の新基地建設を巡り、総務省の第三者機関「国地方係争処理委員会」は17日、埋め立て承認撤回を取り消した国土交通相の裁決は違法だとして県が申し出た審査を却下した。係争委は2月にも県の申し出を却下しており、基本的な論点が共通していた今回の判断は県と政府にとって「想定内」だったと言える。県が決定を不服として提訴するのに対し、工事を強行してきた政府が手を緩める気配はない。

 係争委の富越和厚委員長(元東京高裁長官)は17日の会見で、国交相が埋め立て承認撤回を一時的に止めたことを巡って開かれた前回の係争委と、県の主張内容が同じだったとして「我々の判断も基本的に同旨ということになる」と判断理由を説明した。係争委は前回、県の申し出を却下するのに法で定められた90日の審査期間の終盤まで時間を費やしたが、今回は審査期限の7月23日まで1カ月以上を残したまま結論を出した。

■早期判断

 前回の係争委は国と県の双方に追加の意見陳述を文書で求めた。双方とも詳細な意見書やそれに対する反論書を繰り返し送り、主張を補強した。だが今回の撤回取り消し決定についての審査申し出について係争委が当事者の意見陳述を求めることはなかった。

 県関係者の一人は「(1995年の)少女乱暴事件以降、県民は二十数年間、血のにじむ努力をしてきた。そんな歴史を排除し、文書のみを見て机上で切り捨てられるのは納得いかない」と語った。制度上、争点にならないことを知っていてもそう思わざるを得ないという。「係争委は本来の役割を忘れ、国を優先し地方自治体をないがしろにしてはいないか」と疑問を呈した。

 県は今後係争委の決定通知書が到達してから30日以内に福岡高裁那覇支部に提訴する。国が辺野古埋め立て承認撤回を取り消した決定を巡って県は別の訴訟も那覇地裁に起こす方針で、複数の訴訟が並行する法廷闘争に突入することになる。防衛省関係者は係争委の決定について「瑕疵(かし)はないと判断していただいた。法令にのっとっており、裁判にも懸念材料はない」と自信をのぞかせる。

■法廷へ

 政府は埋め立て承認撤回に対抗して効力を失わせた昨年10月以降、工事を続ける一方で、新たに発覚した軟弱地盤の改良の詳細や、全体の工期や工費について明らかにしていない。護岸を使用した埋め立て土砂陸揚げについて、県から手続きの違反に当たると指摘されても、「問題ない」(岩屋毅防衛相)として工事を止める姿勢を見せない。

 法廷闘争に関しては、埋め立て承認取り消しに関し国と県が互いを訴える訴訟合戦を繰り広げた末、2016年12月に県の判断を違法とする最高裁判決が出された経緯がある。政府関係者はこれを引き合いに「知事が振り上げた拳を下ろせない状況は理解するが、いつか来た道だ」と語った。

 係争委が県の主張を却下することは県にとっても「想定内」(県幹部)とは言え、一時的にせよ「負け」の場面が続くことへの警戒感が県庁内の一部や知事周辺に漂う。法廷闘争に向けて県の態勢を強化することなどの対策案が具体的に上がっている。県幹部の一人は「(承認取り消しを巡る裁判と)同じパターンに陥ってはいけない。壁は高いが、知恵を結集して打破することが大事だ」と前を見据えた。

 玉城県政は11日に全国を行脚して基地負担を訴える全国キャラバンを始動させた。法廷闘争だけでなく全国世論への訴えにも力を入れる構えだ。 (當山幸都、明真南斗)