国が米軍基地内PFOS調査を断念 2年連続、嘉手納基地が許可せず


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 米軍基地周辺の河川や湧き水から有機フッ素化合物PFOS(ピーフォス)などが高濃度で検出されている問題で、沖縄防衛局が2017年度に続き18年度も米軍嘉手納基地への立ち入り調査を要請したが、米軍から許可を得られず断念していたことが10日までに分かった。このため防衛局は基地外で調査することを決めたが、米軍との調整に約1年を要し、調査の実施は19年度にずれ込み、まだ実現していない。県などは立ち入り調査を米軍に認めさせるよう国に要請しているが、国も立ち入りできない現状が浮き彫りになった。

 調査団体インフォームド・パブリック・プロジェクトの河村雅美代表による情報開示請求で明らかになった。河村代表は「この問題に関して日本政府は何もできていない。同盟国の米軍基地が汚染源であることを特定するための調査を、日本政府は沖縄のために実施できないのではないか」と指摘した。

 開示された資料によると、調査・分析作業は当初、18年の4月から8月までに米側と調整し、9、10月に業務を発注、11月からは比謝川周辺で実施する予定だった。だが19年5月まで米側と調整しても立ち入りは認められず、基地外で調査することになった。業務開始は8月ごろになる見通しだ。

 防衛局は本紙の取材に「国内におけるPFOSなどを規制する基準がない中、調査結果の活用方法について米側との調整が整わなかった」と答えた。立ち入りの手続きや環境調査への協力を定めた日米合意には、立ち入りの条件として環境基準値などは上げられていない。防衛局は今回の米軍との調整について「特定の合意に基づくものではない」とも述べた。

 防衛局は17年度にも基地内外で調査を予定していたが、米軍が応じず調査地点を基地外に変更して実施していた。

 (明真南斗)


【識者評論】沖縄県は事実を整理し対応の具体化を 河村雅美インフォームド・パブリックプロジェクト代表

 日本政府がどのように、どれだけプレッシャーをかけて米側と交渉したかは定かでないが「現況調査」という予定された調査自体が安全な飲料水の確保という問題解決のためにどれだけ意味があるものか疑問だ。基地への立ち入りを断念したからという理由でこのまま防衛省が漫然と基地周辺で調査することを、県も県民も傍観してはならないだろう。

 また、日本政府が基地内に立ち入りできないことを問題が進まないことの言い訳にするのを許してはならず、沖縄側もそれを理由に足踏みしていてはならないと考える。現在、行政の要請や議会の意見書などでも「何のための立ち入りか」が想定されておらず、立ち入り自体を自己目的化してしまっている。もはやそのような段階でないことを認識する必要がある。

 汚染源の特定に関しては、嘉手納基地の空軍は県や日本政府と協議の場にも出ており、在日米軍司令部に問題を報告していることからも、汚染源であることは否定していないといえよう。

 県の基地周囲の河川や地下水、基地内の井戸の調査、米軍による基地内の調査というデータもある。県はまずこのようなデータや米軍の対応状況といった事実を整理し、この問題が現在どのような段階にあるかをきちんと示すべきだ。立ち入りができないという限られた条件下でも、どこにどのようなプレッシャーをかけていけるのか、何ができるかをより具体的に県民も行政と考え続ける必要がある。