沖縄県内でおなじみの「ウメーシ」と呼ばれる黄色と赤色の配色が印象的な箸。沖縄そば店や食堂でもよく見掛ける県民御用達の日用品が食卓から“消える”危機に直面している。メーカーの廃業に伴って生産が中止となり、那覇市内の卸業者が抱える在庫分がなくなり次第、市場への新規の出荷はできなくなる見込みだ。関係者から「沖縄文化の象徴のひとつがなくなる」と惜しむ声が上がっている。
正式な商品名は「竹塗箸」で、30年ほど前から県内で流通している竹製の箸。抗菌作用を持たせるためにウコンを使った染料で染め、滑り止めに漆を塗りつけている。製造元である鹿児島県薩摩川内市の竹材加工業「中西竹材工業」が廃業し、先月いっぱいで生産がストップした。
生産中止について、卸元であるカネナガ商事(那覇市壺屋)の田川信次さん(42)は「1本ずつ手作りしていたが、職人の高齢化が進み、後継者の確保ができなくなった。原材料の高騰によるコスト増もネックになった」と説明する。福井県にも土産品として同種の製品を作る業者がいるものの、入荷コストは倍になり、従来と同価格で市場に卸すのは厳しいという。
10本入り300円で量販店などで店頭販売もしているが、在庫の約6千個がなくなった時点で卸・販売ともに終了する。田川さんは「今後は食堂などでも見る機会が減っていくだろう。沖縄文化の象徴がなくなってしまうようで寂しい」と肩を落とした。
生産中止は飲食店関係者にも衝撃を与えている。那覇市泉崎の県庁地下にある食堂「ファンファーレ」店主、比嘉正隆さん(70)は「えっ、本当?」と絶句。年に一度、正月明けに入荷するのが恒例だったとし、「ウメーシを市場に買いに行って『今年もがんばろう』という気持ちになった。張り合いがなくなってしまう」とため息をついた。