日本軍「慰安婦」の問題を扱ったドキュメンタリー「主戦場」(ミキ・デザキ監督)が20日から、沖縄県那覇市の桜坂劇場で上映されている。日本各地で公開され、一部の映画館ではロングランになるなど、注目を浴びている。慰安婦問題を研究している歴史学者や元慰安婦の子ども、元慰安婦の証言を虚偽だと主張する政治家や評論家にそれぞれカメラを向けて、慰安婦問題の本質に迫る。製作した米・フロリダ出身の日系2世であるデザキ監督に話を聞いた。(聞き手 金城実倫)
―慰安婦問題を取り上げたきっかけは。
「数年前、沖縄の高校でALT(外国語指導助手)をしていた時に日本には人種差別があるという動画をつくり、ユーチューブに流した。そしたらネトウヨ(ネット右翼)から攻撃を受けた。同じように元慰安婦の証言を初めて報道した元朝日新聞記者の植村隆さんがネトウヨに攻撃され、娘も誹謗(ひぼう)中傷を受けていることを知った。なぜ日本の右派はそこまでして慰安婦問題に敏感になるのだろうか。興味を抱いた」
―作品では元慰安婦の証言を否定する右派にもインタビューしている。
「製作した当時は大学院生で、歴史問題の研究の一環としてインタビューを要請した。取材相手には映画のプロジェクトとして良い作品ができれば、将来的には映画館で上映すると伝えていた。彼ら(右派論者)は快く引き受けてくれた。今考えたら、(私が)日系2世なので、自分たちの主張を理解できると考えていたのだと思う」
―劇中では人種差別や女性差別にも迫っている。
「幼い頃、同じ米国人なのに『国に帰れ』と言われたり、目を細めてアジア人のまねをされたりと差別を受けてきた。今でも差別はあって、米国のメディアはアジア系の人の話題には全く無関心だ。それらの経験によって慰安婦問題を追うと、人種差別や女性差別に行き着くと感じた」
―作品では慰安婦問題を知らない日本人の若者の姿を伝えている。
「沖縄にいた時の高校の元教え子が最近大阪で見てくれて、この映画を見るまで元慰安婦のことを全く知らなかったと話していた。多くの日本人はこの問題を知らないでいる。今の教科書には『慰安婦』という文字がない。若い人たちが関心を示さない限り、慰安婦という言葉は消えていくだろう」
―本作を一番見てほしい人は誰か。
「『慰安婦』の記述のない教科書を使って育った、選挙に興味を示さない40歳以下に見てほしい。無関心の人に伝えてほしい」