【識者談話】裁判所は積極的に審査を 沖縄県が国提訴で徳田博人琉球大教授


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徳田博人琉球大教授

 7月17日の地方自治法に基づく関与取り消し訴訟における主な争点は、行政不服審査法に基づく審査請求などをした沖縄防衛局は私人か否かであった。今回の抗告訴訟は、県の埋め立て承認撤回を違法とする国土交通大臣の裁決に対して、行政事件訴訟法に基づき裁決の取り消しを求めて提訴したものだ。いずれの裁判においても、県が勝訴すれば国は埋め立て工事を継続することはできない。

 今回の訴訟で県は、国土交通大臣の裁決の違法性を主張し、その違法な裁決が県の自主的判断(自治権)を侵害していると主張することとなる。国土交通大臣による裁決では、沖縄防衛局の私人なりすましを認めた。さらに十分な調査やデータがそろっていない段階で軟弱地盤について問題がないとしたり、その他に県が撤回の理由とした環境対策や高さ制限問題などに対しても、身内の沖縄防衛局の主張をうのみにしたりするだけで、国の都合によい法解釈と法的処理を行った。地方自治(自治権)への配慮を欠くものであったと言える。

 県は、県民の安全や生命を守るために埋め立て承認の撤回をしたのであり、県の判断は2月24日の県民投票の結果から見ても支持されている。今回の訴訟は、県民を代弁して県民の命と尊厳を守るために埋め立て承認の適法性=裁決の違法性を主張する裁判を提訴したこととなる。民主主義にとって地方自治が不可欠であり、それを支えるところに裁判所の存在意義がある。

 裁判所には、国の権威主義的法運営を直視し、国土交通大臣による埋め立て承認取り消しの裁決が違法であり、県の自主的判断(自治権)の侵害に当たることを積極的に審査・認定することで、自らの存在理由を示してもらいたい。
 (徳田博人、琉球大教授 行政法)