辺野古2訴訟同時進行で県が描く戦略とは…


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県が国を相手取り、新たな訴訟を提起したことを受けて会見を開く玉城デニー知事(中央)=7日、県庁

 沖縄県名護市辺野古の新基地建設を巡り、県が政府を相手取り新たな訴訟を提起した。政府が県の埋め立て承認撤回を取り消した手続きを「自作自演だ」などと批判してきた玉城デニー知事は7日、その違法性や県の主張の正当性を法廷で訴える決意を改めて示した。一方、安倍晋三首相は同日、来日したエスパー米国防長官との会談で辺野古移設を着実に進める方針を確認。大きな米軍基地負担を抱える沖縄の反発など、どこ吹く風と言わんばかりに、強固な日米の同盟関係アピールに躍起となった。

 県が7日に行政事件訴訟法に基づく新たな訴訟を提起したことで、辺野古を巡る2訴訟が並行して進むこととなった。県としては、辺野古の埋め立て承認撤回を取り消した政府の違法性に主眼を置いた7月の提訴に加え、今回の提訴では承認撤回の中身に踏み込んだ審議に持ち込み、自身の埋め立て承認撤回そのものの適法性を主張する狙いがある。

■期待

 県の訴えに対し、今後の裁判で政府は中身に立ち入らず訴訟を終わらせようと「門前払い」を求めるとみられる。ただ、これまで名護市民が那覇地裁に起こした同様の裁判で、入り口論に終始しようとした政府側に対し、平山馨裁判長が不快感を示した経緯がある。

 提訴に関わる県関係者の一人はそのことを念頭に、今後の県との裁判では政府側が「中身に立ち入って審理したいと考えるのではないか」と期待を込める。中身の審理に入れれば、県が政府の強引な工事の進め方を裁判を通じて世間に「告発」することもできるからだ。

■工事止まらず

 県の提訴に先立つ7日午前、新たに米国防長官に就いたエスパー氏と会談した安倍首相や岩屋毅防衛相らは、辺野古移設を着実に進めることや「唯一の解決策」との方針を再確認した。政府関係者は「国防長官が交代したところで方針が変わるはずがない」と語った。

 県の提訴を意に介さないかのように、防衛省は今月末に財務省に要求する来年度予算の概算要求で、引き続き辺野古移設の関連経費を盛り込む方針だ。今回の県の提訴で一時的に移設作業が止まるといったこともなく、防衛省関係者は「工事そのものに影響はない」と淡々と受け止める。一連の県の提訴に対して焦る様子はなく、悲観的な見通しも聞こえてこない。

■1年の攻防

 今後の裁判で論点となる県の埋め立て承認撤回は、昨年7月に翁長雄志前知事が表明した。その翁長氏の急逝から8日で1年となる。県幹部が「予想もしていなかった」と振り返るように、知事選での玉城氏の当選やその後の県民投票など、この1年で沖縄を取り巻く政治情勢は慌ただしく推移したが、辺野古新基地建設に反対する県民の民意は変わらずに示され続けてきた。

 7日に裁判所に提出した訴状で県は県民投票の結果についても盛り込み、主張を補強した。別の県関係者は「勝算があるから提訴する」と強調しつつ「裁判の結果がどうなろうと沖縄の民意は変わらない。それぐらい強固だ」と付け加えた。
 (明真南斗、當山幸都)