2004年8月の沖国大ヘリ墜落事故の際に県知事を務めていた稲嶺恵一氏に当時の状況や危険性が放置されている現状、普天間飛行場の危険性除去に向けた方策などについて意見を聞いた。(聞き手・吉田健一)
―沖国大へのヘリ墜落事故を振り返ってほしい。
「事故発生時、私は南米を訪問していた。報告を受け、予定する日程をキャンセルし、何十時間もかけて日本に戻ったが、当時の小泉純一郎首相は夏休みを理由に面談してくれなかった。メディアの扱いも小さかった。首相だけではなく本土全体の基地問題に対する冷ややかさと温度差を実感した」
―知事時代に苦渋の選択をして「15年使用期限」など条件付きで県内移設を容認した。
「基地の固定化は絶対に認められないために条件を付けた。『15年使用期限』は私から言っていない。例えとして15年と言っただけで、基本的には固定化を避けることが目的だった」
「普天間は当初、キャンプ・シュワブ内に移す案があった。しかし、騒音への懸念や地元の反対もあり、沖合2・2キロに滑走路を備える案に決まった。この案は県や北部市町村、漁業関係者など公的には100%賛成だった。しかし結果的にその案が変わって残念だ」
―普天間の危険性除去をどう実現するか。
「今のプロパガンダ(政治宣伝)化している『オール沖縄』ではなく、1995年の県民大会の際に実現した真の『オール沖縄』を体現すべきだ。かつて、真の『オール沖縄』が実現したからこそ政府は真剣に沖縄のことを考え、96年のSACO最終報告につながった」
「普天間の危険性がゼロになった時期がある。それはイラク戦争の時で、普天間に数機の故障機しかいなかった。その事実があったことは大きい。基地はもっと弾力的に運用はできる。やる気があるかないかだけで、今は日本政府にやる気がないだけだ。日米地位協定にしてもそうだ。政府の怠慢であり、防衛問題を常に棚上げしてきた政府の体質で沖縄に全てしわ寄せが来ている」
―辺野古問題で政府と県の対立が続くが、どうみるか。
「オールオアナッシングを避けるべきだ。対立が続けば、沖縄の将来が不安だ。将来のために今、種をまかないといけない。裁判で争うのではなく、国には移設計画を見直してほしい。軟弱地盤の存在もあるが、情勢が変わる中で、計画を見直し、修正することが必要だ。今の情勢をみると片方(県)は全面的に反対。片方(政府)は全面的に進めるという形は望ましくない。ベターな選択肢があると思う。県と政府は謙虚な立場で本当の意味での話し合いをすべきだ」