出荷量落ち込み続く泡盛 消費拡大へ業界が描く戦略とは… 県酒造組合会長に聞く


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 9月4日は語呂合わせで「古酒(クース)の日」。出荷量の落ち込みが続く泡盛業界では最近、「琉球泡盛海外輸出プロジェクト」や県産の長粒米を用いた泡盛作り「テロワールプロジェクト」、泡盛での乾杯を推進する条例の制定など、さまざまな取り組みを推進している。クースの日に合わせ消費拡大をPRする各種イベントを実施する県酒造組合の佐久本学会長(50)に、今後の展望や課題などを聞いた。

 ―海外輸出プロジェクトの成果や課題は何か。

 「国などの支援で泡盛を海外に売り込むプロモーション活動や、県内で生産した長粒米を用いて泡盛を製造する『琉球泡盛テロワールプロジェクト』を実施している。出荷量の拡大という点はこれからだが、海外輸出に挑戦する酒造所は増えてきており、海外でも泡盛の認知度も高まってきていると感じている」

 「自社の話だが、瑞泉酒造は製品の約1・5%を海外輸出している。輸出に取り組み始めたのは2002年ごろで、十数年で少しずつ認知度を広げてきた。最近では月千人を超える外国人観光客が酒造所を訪れ、古酒を買う層もいる。海外展開は短期間ですぐ成果が上がるものではないが、取り組み方次第では十分な可能性があると思っている」

 ―テロワールプロジェクトの展望は。

 「8月に伊平屋村で長粒米の植え付けが始まり、早ければ1年後には試作品ができる。テロワールの意義は沖縄の米、水、原材料を使って歴史と伝統ある泡盛を生産する点にある。ストーリー性という付加価値を付けて海外に売り込む戦略だ。海外で泡盛を売る際に、原材料がタイ米だと『これはタイの酒なのか』と思われかねないという問題もある」

 「実際の話、県産米だからタイ米の2倍味が良くなる、ということはない。県産米利用というストーリーと希少性という二つの価値を組み合わせることで、ある程度の高価格でも販売できると思う。現在は加工米に補助金が付くことで、食用米の生産より農家の利益に結びつくメリットがあるが、将来は補助がなくても自立的に生産できる体制を構築することも大切だ」

 ―琉球泡盛で乾杯を推進する条例の制定にも取り組んでいる。

 「条例の制定については、消費者が泡盛に触れるきっかけ、意識付けにつながってほしいとの思いがある。琉球泡盛が600年の歴史を持ち、海外でも評価されつつある素晴らしいお酒だということを、条例を通して県民に広く知ってほしい。こうした取り組みを積み重ねながら、県内での泡盛の消費拡大にもつなげていきたい」
 (聞き手・外間愛也)