被災漁船に第二の使命 沖縄の漁師が修復、モズク船に 東日本大震災の津波で8年漂流


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丸一日かけて海上から陸へと船を引き上げた伊藤達也さん(左から2人目)、花城治さん(左端)ら=4日午後、金武町金武

 【金武】東日本大震災の津波にさらわれて以来、8年余り漂流し、8月31日に金武町金武の浜に流れ着いた岩手県釜石市の漁船「清昭丸」が金武の海人によって再び大海原で活躍しようとしている。4日、引き取りを名乗り出た金武漁協組合の伊藤達也さん(32)らは再び“漂流”することがないよう丸一日かけて海から陸へと船を引き上げた。伊藤さんは「金武に着いたのも何かの縁だ。もう一度、仕事をさせてあげたい」と笑った。

 清昭丸(0・8トン)は岩手県釜石の漁師・佐々木清文さん(74)の船。エンジンなど動力部はなくなっており、一部破損箇所も見られるが大きな損傷はない。

 3日、「地元で使ってもらえるならうれしい」との佐々木さんの意向を受けた町が金武漁協に確認したところ、伊藤さんらが名乗りを上げた。

 陸揚げ後、船底などを確認した伊藤さんは「大丈夫そう。モズク養殖に使いたい」と話した。ユニック車で船の陸揚げに協力した建設業の花城治さん(42)は「せっかく来たのだから大事にしてあげたかった」と語った。

 漂流先で第二の使命が与えられるかも知れないことに、佐々木さんは「妻と2人、この船で20年ワカメ養殖やウニ、アワビを捕って子どもを育てた。金武の方が使ってくれるならこんなにうれしいことはない」と喜んだ。
 (佐野真慈)