〈16〉ひきこもり 精神障がいある場合も


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 最近マスコミで「ひきこもり」が話題になっています。2010年の調査によると、国内には約69万6000人の「ひきこもり」がいるとされています。

 「ひきこもり」は、いじめや受験の失敗などさまざまな挫折体験から始まることが多くなっています。背景に統合失調症や自閉性障害、広汎性発達障害、赤面恐怖症等の神経症性障害など、精神障害が見られる場合も多いです。

 それらは現在、薬物療法や精神療法など専門機関で治療を受けることで社会復帰できることが増えています。また障害者支援法により、企業にも2・2%の障害者雇用が義務付けられており、雇用に向けた精神科デイケア、さまざまな作業所等の支援事業も充実してきています。

 最近では高齢者の「ひきこもり」も増えていますが、孤立することによるうつ、被害妄想等の精神症状や認知症の進行が懸念されます。幸い、デイケアやデイサービスなど、それらの疾病を予防できる機関も増えています。超高齢化社会を迎えるに当たって、孤立化を防ぐためにいろいろなサークルや模合など社会資源をぜひ活用したいものです。

 典型的な例として、Aさんのケースをご紹介します。Aさんは広汎性発達障害があり、場の空気を読むのが苦手で、はっきりした物言いで周囲から孤立しました。いじめにも遭って中学時代から次第に不登校となりました。引きこもりがちで人を避けるようになり、周囲の目を過剰に意識するようになりました。

 彼のように家に引きこもり、孤立して周囲の目を気にしだすと、神経もピリピリして過敏になります。当人にとっては全く関係のない話し声や物音でも「自分のことを言っている」など被害妄想的となり、ますます家にこもるようになります。

 このように「ひきこもり」の背景に精神的問題を抱えている疑いがある時は、早期に精神科の専門医を受診することが望まれます。

 (仲本政雄、博愛病院 内科・精神科)