13日に投開票された台湾総統選は、与党民主進歩党(民進党)の頼清徳副総統が、最大野党国民党の侯友宜・新北市長、野党第2党台湾民衆党の柯文哲・前台北市長との接戦を制し、初当選した。台湾の独自色を強めるとみられる一方、中台対立激化も懸念される。総統選で示された民意の意味、盛んに言われる「台湾有事」など沖縄への影響について識者に聞いた。
2000年代以降の選挙をみると、台湾の人々は中国大陸に近づきすぎると選挙で民進党を選択し、大陸と離れて米国に近づきすぎると国民党を選ぶなど、どちらの極にも振れすぎないようにバランスをとってきた。
今回民進党の頼清徳氏が勝利したということは台湾の人々は現状維持を選択したということだ。ただ民進党は立法院の過半数は握れなかった。それに今回は若者を中心に支持を集めた第三極の民衆党候補の躍進もあった。これは単純に中国との「統一」か「独立」か―の二項対立では捉えきれない新しい台湾の政治潮流を表しているのではないか。
一方で、「統独問題」にとどまらず現実の台湾社会はもっと複雑で多元的だ。多様な民族が暮らしており、単純に大陸に合わせて揺れ動いているわけではない。
それに台湾と中国の両岸問題とは、50年におよぶ日本の植民地支配と国共内戦という矛盾が絡んでできあがったものだ。台湾の人々は植民地支配を受けた歴史を大陸に十分理解されていないと感じていると私は思う。これは沖縄が復帰前の米施政権下で被った悲惨な歴史を本土の人々が理解して基地を撤去することを望むが、理解はされずに基地が置かれ続けている様子と似ている。この願いは台湾の統独問題にかかわらず、今後も残り続ける。日本社会もいかに植民地支配が困難な問題を残したのかを理解する必要がある。
台湾の人々のバランス感覚によって「台湾有事」の可能性も現状維持となった。一般的に自治体外交では非政治部門で分厚いコミュケーションをとり続けることで、問題を小さくすることができる。県の地域外交もそういった役割を果たしていけるだろう。
(国際関係学)