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中国・北京の琉球人墓、保存へ 「景観整備に全力」共産党機関紙が報じる 琉球処分時、救国訴えた陳情使らを埋葬


中国・北京の琉球人墓、保存へ 「景観整備に全力」共産党機関紙が報じる 琉球処分時、救国訴えた陳情使らを埋葬 1879年「琉球処分」前後に中国へ亡命し、琉球救国を訴えた琉球人が眠る墓地跡地=2015年、中国・北京市通州区張家湾鎮立禅庵村
この記事を書いた人 Avatar photo 中村 万里子

 沖縄県内の研究者らが中国・北京市郊外の琉球人埋葬地の保存などを求めてきた件で、北京市の共産党機関紙「北京日報」は1月5日付で、北京市通州区張家湾が「琉球人墓(琉球国墓地跡地)の景観の整備に全力を挙げる」方針だと報じた。「北京琉球人墓復元・保全会」会長の又吉盛清沖縄大客員教授は「朗報だ。沖縄側の思いを受けとめてもらったと理解している。長い歴史・文化交流の発展によって、新しい道を共に切り開いていきたい」と歓迎する。

 北京郊外の琉球人墓地跡地には、1879年の「琉球処分」(琉球併合)前後に琉球王国の救国を訴え、中国に亡命、北京で客死した陳情使の林世功(りんせいこう)や王大業(おうたいぎょう)、琉球からの進貢使や留学生ら14人ほどが葬られている。

 北京日報によると、張家湾の地元当局は、墓地跡地を含む旧市街エリアを、近代以前の北京の、対外交通の要衝として整備する再開発を進めている。明の時代の城壁跡や運河にかかる橋の修復など周辺整備の7割は完成した。

北京の琉球人墓を訪れ、手を合わせる又吉盛清氏(前列左から2人目)と琉球・沖縄問題国際シンポジウムの参加者ら=2023年10月30日、中国・北京市の通州区

 今後は考古学調査の成果も踏まえ、遺跡公園を建設する予定で、琉球人墓はそのうちの一つの重要な整備になるという。北京日報は、地元当局の見解として「大運河と密接に関わる歴史的スポットが再び活力を取り戻すように力を入れ、福州の琉球人墓に続く中国と琉球の友好交流の重要な証とする」と報じた。

 墓地跡地は発掘調査がなされないまま果樹園となり、所在も不明となっていた。又吉氏は2008年に初めて、現地で石灰岩製の「琉球国・陳情都通官王公大業墓」(琉球国陳情使通訳官・王大業の墓)と記された墓碑を発見。そこが墓地跡地であることを確認した。中国側の研究者を通し、北京側の関係団体・機関に働きかけ、県も16年に保護を依頼。17年に北京市側から保存・復元の方針が伝えられていた。

 又吉氏によると、コロナ禍で中国とのやり取りが中断し、17年以降は詳細が伝えられてこなかった。又吉氏は、資料館や交流広場なども併せて整備する構想も中国側に提出している。北京日報の報道を受け、県も中国側と連携していく必要を指摘した。

 中国と琉球の歴史に詳しい元琉球大准教授の林泉忠氏は「関係者によると、細かい整備方針はまだ決めていないようだ。中国には死者の服を埋葬する方法もある。沖縄側から林世功らの遺品や関連する資料が提供できれば、より豊富な内容の展示施設にすることは可能なのではないか」と話す。

 (中村万里子)