刑務所や少年院で罪を償っても、うまく就業できずに再び罪を犯してしまう事例が後を絶たない。沖縄の高い再犯率を改善するため、出所・出院者の就業を支援する「職親」の組織が10月、県内に発足する。関係者は職親を広げることで「誰でもやり直しができる社会」の実現を目指す。
好転の機会に
日本財団は、企業が就労支援などを通じて刑務所や少年院の出所者・出院者の社会復帰を支える「職親プロジェクト」に取り組んでいる。本部・九州事務局長の原田公裕さんによると、仮出所者の半数以上が出所後に就業の見込みがなく、入所前にいたコミュニティーに戻り再犯に至る傾向があるという。原田さんは「自立更生するためにはどうしても働く場が必要だ」とプロジェクトの意義を強調する。
職親プロジェクトは2013年、関西の7企業で始動した。就業に向けた教育プログラムや、出所者らが住む住居の礼金、電化製品の購入資金の助成など、包括的な支援を掲げる。雇用された出所者の仕事道具や運転免許の取得にかかる費用の支援制度などもある。
23年9月時点で33都道府県の328社が登録する。立ち上げ準備段階の沖縄では4社が登録し、13社が今後登録を進める意向だ。低所得家庭の子や通学・進学に困難がある子などを支援する県内の2団体も連携を進めている。
沖縄こそ
県福祉政策課によると、刑法犯摘発者総数に占める再犯者の割合を示す再犯率は沖縄県は2016年が54%、18年が53・6%でそれぞれ全国2位。最新の21年は刑法犯摘発者総数2483人のうち再犯者は1286人、再犯率51・8%で全国6位と高止まりしている。
沖縄にこそ、職親プロジェクトが必要だと考えた事務局は8日、県内企業を対象にした説明会を浦添市産業振興センター結の街で開いた。
発足当時から職親プロジェクトに参加する解体業の大剛(大阪府)の岩本剛季社長(53)が登壇し、出所予定者に社会復帰を働きかける授業を実施するなどの取り組みを紹介した。「(最初の)会社が合わなければ他の会社を紹介するなど、職親プロジェクトは1人も取りこぼさないようにできている」と語り、仲間を募った。
原田さんは「中高校生の大麻所持問題や貧困状態にある子の多さなど、現状では若者の将来を社会がつぶしてしまう心配がある。沖縄全体に協力を呼びかけ、ぜひプロジェクトを広げたい」と語った。
(西田悠)
職親プロジェクト沖縄支部の発足式は10月24日午後2時~4時半、那覇市牧志の那覇セントラルホテルで開かれる。発足式後には情報交換会も予定している。問い合わせは日本財団職親プロジェクト九州事務局、電話092(406)2446。