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発達障がいの正しい情報を社会に 沖縄出身者らが医療冊子を2万部増刷 クラファンで目標上回る支援


発達障がいの正しい情報を社会に 沖縄出身者らが医療冊子を2万部増刷 クラファンで目標上回る支援 発達障がいに関する研究について語る長濱奈甘乃さん=9月26日、恩納村
この記事を書いた人 Avatar photo 吉田 早希

 筑波大学の仲田真理子助教と沖縄県うるま市出身で心理学類4年の長濱奈甘乃(なあの)さん(22)らが昨年9月、発達障がい当事者や周囲の人向けに通院や服薬の情報をまとめた冊子「薬はじめてガイド」増刷に向け、クラウドファンディング(CF)に挑戦した。当初の目標額を上回る約262万円が寄せられ、その資金で冊子2万部を増刷。希望する全国各地の当事者や家族、病院、学校などに無償で届けた。

 大学1年生の頃にパニック障害と注意欠如多動症(ADHD)の診断を受けた長濱さんは、処方された薬が体に合わず動悸(どうき)や発熱で苦しんだ。副作用の悩みを医師にうまく伝えられず、感覚過敏がある自分自身の感覚にも不信感が募った。自分と同じように悩みを抱える当事者に冊子を届けようと活動に加わってきた。冊子は(1)薬を使うかどうか決める際に知りたいこと(2)薬との付き合い方(3)医師とのコミュニケーション―の3部構成。イラストを交えた一問一答形式で解説している。

 今年4~9月の半年間、沖縄科学技術大学院大学(OIST)のリサーチインターンとしてADHDのある子どもや、ADHDのある子を育てる保護者が子どもとの接し方を学ぶペアレントトレーニングを研究。その傍ら、OISTがある恩納村の役場を訪れ冊子を配布した。CFによって「資金だけでなく、活動を応援してくれる支援の輪が全国に広がったことがうれしかった」と語る。

 一方、日頃の研究の中で発達障がいに関する正しい情報が社会に届いていない現状も知った。ADHDについて「薬を飲んだら治ると思われていたり、症状に個人差があることが知られていなかったりした」。発達障がいのある子を育てる保護者が気軽に相談できる場所が少ないという課題も痛感している。

 大学卒業後も研究を継続したい考えで「本人や家族が正しい情報にアクセスできる環境づくりが大切。研究する立場として、正しい情報を分かりやすく発信することが責務だと思っている」と笑顔で前を見据えた。

 (吉田早希)