prime

沖縄の味で世界に挑戦 3代目、店の味わいと信頼守る 沖縄そばと料理「やんばる」社長の岡本慎之介さん<県人ネットワーク>


沖縄の味で世界に挑戦 3代目、店の味わいと信頼守る 沖縄そばと料理「やんばる」社長の岡本慎之介さん<県人ネットワーク>  岡本 慎之介さん
この記事を書いた人 Avatar photo 斎藤 学

 季節によらず、人いきれがする東京の新宿で、オレンジ色の看板が目を引く。沖縄そばと料理の店を展開する「やんばる」だ。1988年に創業し、経営者は3代目に引き継がれた。都心の一等地で30年を超えて沖縄の味わいを発信し続け、もはや老舗の風格がただよう。

 複数の電車が乗り入れる新宿駅。本店は歩いても5分前後でたどり着ける好立地だ。創業者は名護市出身の東嵩純さん。建設関連の事業を引退後に「自分ならもっとリーズナブルで、おいしいものが出せる」と一念発起し開業に至ったという。60歳を超えてからの起業だった。思い切りの良さも手伝ってか、やや採算度外視のきらいもあったようだが、都心に着実に沖縄の味を広め、店の礎を築いた。

 「娘の東玲子さんが2代目の代表になって経理の視点から法人としての地歩を固めた。そして飛躍の機会が訪れたと思っている」

 岡本さんは、創業者の孫で県系3世。飲食業に魅入られて大学卒業後は自ら率先して飲食業界に飛び込み、マネジメントなど実務を学んだ。「やんばる」を継ぐのを念頭に据えた武者修行だ。自らに課したミッションでもある「飛躍」を誓い、周到な準備を進めた。

 大手から中小の飲食業にも転職して接客を含めた現場経営を見詰め、吸収してきた。「勤怠管理や発注などシステムの違いは事業規模によって大きく、やんばるに合うシステムの採否につながった」と言う。

 新宿を拠点に昨年から事業拡大に向け舵(かじ)を切った。池袋での開店を皮切りに今年に入って有楽町、汐留と進出した。そして都内でも最大規模の店舗が28日、新宿にオープンする。本店と2号店を合わせた店舗で居酒屋と食堂の機能を持つ。真新しい外装はおしゃれさも醸し出しており、大きくイメージチェンジする。

 飛躍の舞台は日本にとどまらない。売り上げは今や、コロナ禍前をしのぐ勢いだ。とはいえ、飲食業界も競争相手が多く存在し、しのぎを削る市場だ。「レッドオーシャンなので、やっぱり世界で戦った方がいいと思う。まずは近場で台湾とか」と話し、事業展開は世界も視野に入れる。

 入念な準備も進行中だ。店舗運営を「フォーマット化させてフランチャイズ展開も考えている」。今年6月には池袋にセントラルキッチンを造り、品質管理者を配置し濃縮スープの製造から着手している。

 創業者のこだわった「おいしさ、味わいはしっかり継いでいく」。企業秘密でもある濃縮スープのレシピは紙でも電子でも残しておらず頭の中だ。受け継がれてきた秘伝の味は「逆にアナログで残していく」という徹底ぶりだ。3代目につながれた「やんばる」を支えた味わいを守るのは、常連を含め客への味の信頼を守ることでもある。

 「家業から企業へ。そのため飲食店1本ではなく、売り上げの柱は2~3本持っていたい」。物販も含めて新規事業への挑戦を続け、企業「やんばる」の将来像を描く。

 (斎藤学)

…………………………………………………………………

 おかもと・しんのすけ 1987年11月生まれ。東京都生まれ。日本大学卒業後にプロントコーポーレションに入社。その後、同じく飲食業を経験し現在は有限会社「やんばる」の代表取締役社長を務める。