更年期症状に悩む女性たちをサポートしようと、沖縄県内の研究者と産婦人科医らが共同で開発した更年期オンライン診療サービスが始まっている。女性の更年期や健康について研究する「HerLifeLab(ハーライフラボ)」代表で、医学博士のオリガ・エリセーバさん(52)自身が更年期症状で悩んだことが立ち上げのきっかけだ。オリガさんは「女性の健康は、社会全体の健康につながっている。更年期の症状に悩み不安を抱える女性たちをサポートしたい」と語る。
昨年12月にスタートした更年期オンライン診療サービス「女性のためのマイドクター ビバエル」はカウンセリングや診察から処方、処方薬郵送までの対応をまとめて担う。診療の対象は、県内を含め全国各地の女性だ。ビデオ会議システム「Zoom(ズーム)」を介して、更年期専門の看護師や助産師が、患者の状況を詳しく聞き取り、浦添市にあるNaoko女性クリニックの産婦人科専門医・高宮城直子さんが診療を担当する。
サービスは、(1)更年期専門の医療従事者による個別診療(2)ホルモン補充療法や漢方薬などの選択肢から最適な治療を選択(3)ウェブ予約で待ち時間がないオンライン診療(4)薬を自宅に郵送―の四つの特徴がある。更年期症状や治療法の選択肢を医療従事者と相談できる「看護カウンセリングプラン」や、カウンセリングに加え医師が診察し治療を提案する「診察プラン」、処方薬の郵送やLINE(ライン)相談が加わったプランなどがある。
ベラルーシ出身で沖縄科学技術大学院大学(OIST)の客員研究員としても活躍するオリガさんは44歳の時、ほてりや関節痛、物事を覚えることが難しくなるなど、さまざまな更年期症状に悩まされた。医療機関を受診し漠然とした不安や症状を打ち明けたが、なかなか適切な治療にたどり着くことができなかった。我慢を勧められたこともあったという。
転機は三つ目に訪れた病院だった。「先生がゆっくり話を聞いてくれて、『一緒に考えながら治療しましょう』と共感してくれたことが何よりうれしかった」。気持ちも落ち着き、前を向けるようになった。
自身の経験をきっかけに、2021年ごろから女性の更年期や健康問題について研究・調査を開始すると、更年期の女性の悩みに寄り添い支援したいという思いに共感する仲間が増えていった。投資会社のインキュベイトファンドとライフタイムベンチャーズから資金を調達し、オンライン診療のシステムを構築した。
現在利用者の多くは県内女性で、更年期症状に長年悩み、複数の医療機関を受診してきた人も多いという。「更年期症状は我慢するべきもの、という考えを変えたい。ビバエルを利用して良かったと思ってもらえるよう、よりよいサービスに向けて改善と研究を続けていく」と笑顔で話した。サイトは「ビバエル」で検索。
(吉田早希)