prime

社会構造がつくる沖縄女性への被害<伊是名夏子100センチの視界から>178


社会構造がつくる沖縄女性への被害<伊是名夏子100センチの視界から>178
この記事を書いた人 Avatar photo 外部執筆者

 私たちが住む日本で、性別のカテゴリーはいろいろありますが、男性と女性の数はほぼ同じです。それにも関わらず法律をはじめとするルールを作りリーダーシップを取る政治家や、社長や会長などはほとんどが男性です。女性は家事や育児、介護が押し付けられることがあり、働き方の選択肢も減り、給料が低くなりがちです。そんな女性特有の問題は、男性だけの集まりでは見えづらく、解決もされにくくなります。

 それが当たり前の日常なので、女性も男性も格差や差別があることに慣れてしまい、疑問や怒りを感じにくくなります。ジェンダー・ギャップ指数が146カ国中118位の日本にはびこる女性差別は、本当はすさまじいのです。

 また日本と米国は関係は対等ではなく、日本にとって不利な決まりがたくさんあります。ゆがんだ関係性の中で、そのしわ寄せは沖縄に集中しています。基地問題もそうですし、戦後の経済格差もそうです。女性であるというだけで不利なことが多い日本で、沖縄に生きる女性たちはさらに虐げられます。いくつもの入り組んだ差別構造の被害を、じかに受けるのです。米兵からの暴行事件がまさしくそうでしょう。

 「あなたの服装や、行動にも責任があったのでは?」と被害者を責め、非難することもよくあります。被害を自己責任にし、意図的に加害を隠蔽するのです。そんな自分の立場が守られていない場所では、被害に遭っても声なんて上げられません。それが沖縄の女性たちが抱えるリアルです。黙らざるを得なかったのです。

 どうにか声を上げ、やっと表に出てきた被害者の数は、少ないように見えるかもしれません。しかし問題は数ではなく、ゆがんだ権力構造なのです。問題が起きると、必ず一番若い人、弱い立場の人が最も追い込まれます。赤ちゃん、子ども、女性、障害のある人、セクシュアルマイノリティー、特定の出生地域の人、外国人などです。

 数は目に見えやすいですが、権力構造は見えにくく、複雑に覆い隠されているので、突き止めるのが難しいです。この強度ガラスのような壁を、一緒に叩いていきませんか? 被害に遭った女性に寄り添いながら、この我慢を押し付けられる構造に怒りませんか? 怒りの奥には深い悲しみがあります。正当な怒りを出し、権力に立ち向かい、この仕組みが変わるよう、私も連帯していきたいです。


 いぜな・なつこ 1982年那覇市生まれ。コラムニスト。骨形成不全症のため車いすで生活しながら2人の子育てに奮闘中。現在は神奈川県在住。