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生死分ける電源確保 自家発電付き事業所建設へ 沖縄県内のNPO法人が支援呼びかけ


生死分ける電源確保 自家発電付き事業所建設へ 沖縄県内のNPO法人が支援呼びかけ 建設中の新事業所前で「地域と助け合い、つながる場所にしたい」と語るNPO法人ToiToiの比嘉珠美代表理事(右)と金澤まゆ理事=12日、沖縄市諸見里
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 人工呼吸器や酸素療法などの医療機器を使用する人々にとって、災害時の停電は命に直結し、電源の確保が重要になる。

 重症心身障がい児など医療的ケアが必要な子どもたちを支援する沖縄市諸見里のNPO法人ToiToi(トイトイ)は、建物の老朽化に伴い、新しい事業所を建設中だ。災害時に医療的ケアが必要な子どもや保護者が避難所としても利用できるよう、プロパンガスを使った自家発電設備を整えたい考え。資金の一部をクラウドファンディング(CF)で募っており、支援の輪が広がりつつある。

 看護師で代表理事の比嘉珠美さん(51)は長年、救急医療や訪問看護に携わってきた。あるとき、医療的ケアが必要な子どもの体調が急変した。「私が寝てしまったのが悪いんです」と自分を責める保護者の言葉が頭から離れない。「眠ることも息抜きすることも全く悪くない。家族が安心して当たり前の生活を送ってほしい」との思いを強くした。

 2017年に、理事の金澤まゆさん(45)と共に医療的ケアが必要な子どもを支援する事業所を立ち上げた。嘱託医師や看護師、保育士ら専門家がチームとなって子どもたちをサポートするほか、障がい児者の旅行相談支援も行っている。

 事業所がある建物は1988年に建てられた。元々喫茶店だった場所をリフォームして利用してきたが、8月の台風6号の影響で1階は水浸しになり、エアコンも故障するなど被害が出た。医療機器を必要とする子どもたちにとって、災害時の電源の確保は生死を分ける問題となる。幸い停電はしなかったが、県内には数日間停電した場所もあった。

 現在ガソリンを使う自家発電設備はあるが、災害時にガソリンスタンドが休業すると影響を受ける。そこで、より安定的な電源確保のため、プロパンガスを使った自家発電設備を導入し、国の補助金でカバーできない費用分をクラウドファンディング(CF)を活用して寄付を呼びかける。目標金額は250万円。

 新事業所は現在と同じく市諸見里で、年内の完成を目指している。金澤さんは「保護者や家族の皆さんから『実現しよう』と力強い言葉をもらった。その思いに応えたい」と話した。比嘉さんは「地域に根付いた事業所にしたい。医療的ケア児の存在を知ってもらう機会になればうれしい」と語った。

 CFサイト「READYFOR(レディーフォー)」で、10月31日まで支援を募っている。

(吉田早希)