山城売店 お疲れさま 地域支えて72年 88歳キクさん「楽しかった」 うるま市石川


山城売店 お疲れさま 地域支えて72年 88歳キクさん「楽しかった」 うるま市石川 地域の人から花束を受け取り笑顔を見せる、山城売店店主の山城キクさん=9月30日、うるま市石川山城
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 【うるま】うるま市石川山城で約72年間にわたり地域の生活を支えてきた「山城売店」が9月30日、長い歴史に幕を下ろした。店主は山城キクさん(88)。戦後、夫の清栄さん(享年90)と夫婦二人三脚で店を切り盛りしてきたが、高齢で体力の限界から、店を続けるのは難しいと閉店を決めた。営業最後の日、多くの常連客が訪れて、「長い間お疲れさま」と山城さんをねぎらった。

 元々は地域の共同売店として出発した。戦後の物資調達が困難な時代、店は地域の人の生活には欠かせない存在だった。石川山城では一番早く電話を設置した。地域の人は電話を借りに売店を訪れ、また山城さんが地域の人宛てに掛かってきた電話を取り次ぐため、各家庭を走り回ったこともあったという。

てきぱきと店を切り盛りする山城さん=9月30日、うるま市石川山城
山城売店店主の山城キクさん。売店は地域の人の心のより所になっていた=9月30日、うるま市石川山城

 近所に住む山城八重子さん(79)は毎日訪れる常連。「『閉めらんけー(閉めないで)』と言ったが仕方がないね。車がないのでここで買い物できて助かった」と話す。よく地域の人が店に集まり、お茶や酒を飲んで語らうなど、心のより所にもなっていた。「店は閉まってさみしいが、これからも遊びに来るよ。長い間ご苦労さまでした」と語りかけた。

 今でもしゃきしゃきと動き回る、働き者の山城さん。売店の傍らサトウキビを栽培する。多くの常連客の訪問に「訪ねてきてくれてうれしい。店は楽しかった」と振り返る。「あしたからも元気に頑張ります」と照れくさそうに目を細めた。
 (石井恵理菜)

山城売店の最後の日、多くの常連客など地域の人が売店に集まり、山城さんをねぎらった=9月30日、うるま市石川山城
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