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沖縄の視点を世界へ 相手に伝わる工夫を 波照間陽(成蹊大学アジア太平洋研究センターポスト・ドクター)<女性たち発・うちなー語らな>


沖縄の視点を世界へ 相手に伝わる工夫を 波照間陽(成蹊大学アジア太平洋研究センターポスト・ドクター)<女性たち発・うちなー語らな>
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 ちょうど17年前、私はアメリカ留学をした。高校時代に県費や国費で留学に行ってきた同級生を見て、「私も大学では必ず留学に行く」と決意していた。好きだった英語をペラペラ話せるようになりたかった。そこで、留学が必須となっている大学へ進学することを決め、大学2年の後期から10カ月留学した。

 留学中の体験で大きな学びとなったのは「発言しなければ存在が認められない」ということだ。幼い頃から引っ込み思案で、授業中に積極的に発言すること、友人以外のクラスメートと話すこと、大人の前で話すことなどが苦手だった。場の空気を読み、つつましく居ることが常だった。この傾向はアメリカでも発揮された。自分の英語に自信がなく、言いたいことが正しく話せない怖さで、発言のタイミングをよく逃していた。友人と少人数で話していても、私以外の人が会話をしていて、私はただ相づちを打つだけ。

 そんな私を変えたきっかけは、留学開始から3カ月余り、年末に日系アメリカ人が運転する車でカリフォルニア州のデーヴィスからロサンゼルスに向かう8時間の長距離ドライブだった。助手席に座っていた友人が眠りに落ちた時、運転中の彼が私に話しかけてきた。シャイであまり会話に入りにくい、といった相談をしたと思う。

 彼は「アメリカでは発言しないと存在しないと見なされるんだ。文法が間違っていても誰も気にしない。伝えたいことを言ってみたらいい」と励ましてくれた。実際、大学の授業では出席するだけでなく、発言して議論に加わることを意味するparticipation(参加)が求められる。発言することで存在を示すのである。

 「沈黙は金なり」という価値観を隠れみのにしていた私にとって、彼のアドバイスは目からうろこだった。勇気を出して何でもいいから発言することが留学後半の目標となり、帰国するころには日常会話ができるレベルまで上達した。

 いまだに国際会議の場で積極的に発言することは高いハードルではあり、精神的な挑戦を課された気になるが、遠慮がちな性格の殻を破って自分の存在を自分で作っていかなくてはいけない。

 さて、私個人の体験から沖縄県にアドバイスを引き出してみたい。沖縄県はワシントン事務所や地域外交室、国連などを通して国際社会に対して発信している。沖縄の視点から見る問題の所在を知ってもらうことは極めて重要だ。その際、世界に向って紋切型のナラティブ(物語)を発するのではなく、相手に応じて何をどう伝えるか、工夫が必要である。プレゼンスを発揮する県の活躍に大いに期待したい。


 はてるま・しの 1985年、那覇市出身。開邦高校卒業後、早稲田大学国際教養学部に進学。在学中に米国カリフォルニア大学デーヴィス校に留学。早稲田大学大学院アジア太平洋研究科で国際関係論を専攻し、昨年、博士号(学術)を取得。現在は成蹊大学アジア太平洋研究センターのポスト・ドクター。専門は米国の海外基地政策。