【中部】北谷町北前の自宅からアラハビーチまで、日差しと海風を感じながら歩くのが日課の女性(65)。「今日も1日頑張ろう」と気持ちを高めていると、頭上を戦闘機が通り過ぎる。ぐぉぉぉぉ―。その瞬間「気持ちが一気になえる」と語る。
沖縄の米軍嘉手納基地。F15戦闘機の退役に伴う巡回配備が始まって4日で1年となった。従来のF15CやF15Dよりも騒音が大きいF35ステルス戦闘機などが同基地を離着陸することが増えた。騒音が住民生活に与える影響は日に日に増している。基地機能の強化に対する不安の声も聞こえてくる。
散歩を日課にする女性は、巡回配備以降は体感的にも騒音が増えているとして「ただただ平穏な日常を返してほしい」とつぶやく。
嘉手納基地を離着陸する米軍機の飛行ルート真下に当たる、うるま市石川東恩納に住む男性(74)は「騒音は頻繁で、夜間や休日の騒音も増えた」と憤る。「多い時には1日100回くらい」の体感だ。テレビでスポーツ番組を見るのが好きだが、連続で米軍機が通り過ぎて音が聞こえず「頭にくる」。遊びに来た2歳の孫が、騒音に驚き泣き出すこともある。妻(72)は騒音の増加と戦争が起こる世界情勢をつなげて「沖縄で戦争が起こるのではないかとの緊迫感がある」と不安を募らせる。
米軍は巡回配備と並行してF15戦闘機を退役させているが、後継で常駐する機種は未定だ。第4次嘉手納爆音訴訟団の福地義広副団長は先行きを案じ、基地機能強化の動きにも危機感を募らせる。
基地内では防錆(ぼうせい)整備格納庫の建設が計画され、10月からはMQ9無人偵察機も配備されている。「騒音の問題だけでなく、沖縄を戦場にしようとしているのではないかとますます不安だ。今すべきは無人機配備ではなく、基地の縮小だ。基地を取り戻すことを考えていかなければ」と訴えた。
(島袋良太、金盛文香、名嘉一心)
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