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「現代の名工」沖縄から2氏、喜びを語る 技高め次代につなぐ


「現代の名工」沖縄から2氏、喜びを語る 技高め次代につなぐ
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 卓越した技能を持ち、それぞれの分野で第一人者と認められる職人を表彰する「現代の名工」に、県内から平良美恵子さん(74)=大宜味村=と、大城尚也さん(59)=名護市=が選ばれた。2人は職人としての栄誉に喜びを語りながら、技術の継承や発展に改めてまい進していくことを誓った。

「芭蕉布を世界へ」平良美恵子さん

素材となるイトバショウの畑で芭蕉布への思いを語る平良美恵子さん=大宜味村喜如嘉

 「世の中に喜如嘉の芭蕉布があるということを沖縄の人、日本の人、世界の人に分かってもらいたい」。芭蕉布織物工房の平良美恵子さん(74)は次の世代へ伝統のバトンを渡すため、県内外で喜如嘉の芭蕉布を発信する活動を続けている。現代の名工認定をきっかけに、より幅広く喜如嘉の芭蕉布が広まることを願う。

 平良さんは福井県出身。1977年に芭蕉布伝承者養成事業の伝承生になった。夫の母親で、後に人間国宝となる平良敏子さん(故人)から夜まで指導を受けることもあった。84年に出版された「喜如嘉の芭蕉布」の編集に携わった際は、道具の方言名が分からなかった自分の体験を踏まえ、道具の方言名を並記し工夫を凝らした。

 喜如嘉の芭蕉布を広める活動は93年のフィリピンを皮切りに、海外でも展開する。98年には台湾を訪れた。平良さんは「作る人にあこがれ、作りたいと言ってくれる人がいないと伝承は難しい」と訴える。(武井悠)


「常に新しい作品を」琉球ガラスの大城尚也さん

ガラスの技法を磨き続ける大城尚也さん=名護市の森のガラス館

 琉球ガラス工芸の製造工・大城尚也さん(59)は20歳でガラス製造の世界に入った。森のガラス館(名護市)で工場長を務める今でも、新たな商品の開発を続ける。ガラスに向き合う上で大切なのは「常に考え、新しい作品を生み出すことだ」と語る。

 南城市出身。自宅近くにあった工房の紹介を受けて、後に森のガラス館を設立する琉球ガラス村(糸満市)に就職した。「初日にこの仕事は最高だと思った。一目ぼれだった」と振り返る。吹きざおで吹いたガラスを、ポンテざおと呼ばれるさおに付け替える作業だった。「熱せられたガラスのつやや光は特にきれいなんだ」と、今でも気持ちは変わらない。

 発注に対して徹底して考え抜き、鉄製の道具を溶接して作り替えることもある。これまでになかった線や形がそこから生まれる。新たな技術を若い職人に教えて、製造工程の標準化を数多く実現したことが評価された。 (増田健太)

現代の名工が発表

「現代の名工」に沖縄から2氏 芭蕉布の平良美恵子さん、琉球ガラス職人の大城尚也さん

 厚生労働省は10日、伝統工芸や工業技術など各分野で優れた技能を持つ150人を、2023年度の「現代の名工」に選んだと発表した。沖縄県内からは染物・仕上工で大宜 …