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ウィズ・アート 市民つなげる新風を 金城聡子(浦添市美術館学芸員)<女性たち発・うちなー語らな>


ウィズ・アート 市民つなげる新風を 金城聡子(浦添市美術館学芸員)<女性たち発・うちなー語らな> 金城聡子
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 昨年の新春にwith コロナになぞらえて「With Art うらそえ」を考案した。「アートと共生する浦添」「浦添でアートと共に」といった意味を込めている。地球上を覆い尽くしたコロナウィルスに人類みなステイホーム。先の見えない不安から、私はアートに救われた。

 わが家は浦添グスクのふもとにあり、近隣に市役所、運動公園、図書館、てだこホールに美術館と文化ゾーンに位置付けられている。このかいわいを中心に市内には環境彫刻、いわゆるパブリックアートが点在している。ざっと数えても大小120点はある。作者は今や沖縄を代表する彫刻家のゴヤ・フリオ、能勢孝二郎、能勢裕子らであり、3人は市内にアトリエを構える。那覇市新都心の沖縄県立博物館・美術館中庭に設置された巨大なオブジェは彼らの作品だ。浦添の作品らは1980年代から90年代の初期作品群である。

 私の通勤ルートはいくつかあり、どこを歩いてもこうした彫刻たちに出合う。コロナ禍で人と話すことさえ制限された日々、ふと見上げた彫刻たちに何度も息抜きし癒やされた。アートの底力だ。市立体育館設置のハンドボール王国宣言モニュメントは、能勢孝二郎のパイプ作品で、材料の足場パイプの躍動的な動きには思わず駆け出したくなる。

 美術館の隣にある保健相談センター前の歩道には、ゴヤ・フリオの超抽象の大型鋼鉄オブジェがある。この作品は近年、下部に穴が開き危険だったが、2021年秋に市と作者の努力で修復し、銀メッキ姿で再設置された。さらに30年と寿命がのびた。

 一方、私たちは、市の有志で作家や専門家を招いた勉強会、浦添市美術館友の会主催によるパブリックアートと作家の展覧会を美術館で開催して盛会裏に終えた。こうした作品をどう維持管理するのか、現在進む運動公園の改修工事では、行政と作家の対話があるとうかがい、うれしい。アート作品を街のレガシーと位置づけ再構築できれば、さらに文化の香り高い街が実現すると思う。西海岸やモノレール沿線など、新たな地域に新たな色の作品も欲しいものだ。

 そして今春、市民による任意団体「With Art うらそえを考える会」が発足した。市民がアートを介在として横断的につながる活動により新風が吹けばいい。応募した公益財団法人沖縄県文化振興会の審査では、「うらそえルネッサンスです!」と大風呂敷を広げたのだが、まんざらでもない。県内どこでも「With Art 〇〇〇」はさらにすてきだ。