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沖縄のガマで学ぶ犠牲者への思い 福島「未来塾」が遺骨収集 原発事故、実相継承を考える


沖縄のガマで学ぶ犠牲者への思い 福島「未来塾」が遺骨収集 原発事故、実相継承を考える 学生らを連れて、ガマで遺骨収集をする具志堅隆松さん(左)=19日、糸満市
この記事を書いた人 Avatar photo 南 彰

 東日本大震災の経験や教訓を発信している「大熊未来塾」(福島県大熊町)のメンバーが沖縄を訪れ、遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」の具志堅隆松さんと19日、糸満市で遺骨収集を体験した。具志堅さんは「犠牲者に近づこうとする行為そのものが慰霊になる」と語り、慰霊と伝承を次世代につないでいくことの重要性を確かめ合った。

 大熊未来塾は、東日本大震災の津波で父と妻子を亡くした木村紀夫さんが立ち上げた。東京電力福島第一原発事故の影響で、帰還困難区域になっている地域の慰霊と伝承に取り組んでいる。

 来年から住民の話の聞き取りをしていく予定だ。その準備の一環で「聞く力」を付けようと、聞き手となる大学生ら14人が15日から沖縄に滞在し、沖縄戦や基地問題に詳しい人たちと意見交換。沖縄戦の激戦地となった糸満市のガマで遺骨収集をした。

 「骨が粉々に砕けている場所は自決があったのではないか」などと具志堅さんが現場の状況を解説しながら、それぞれが地表を削り、遺骨を探した。

 具志堅さんは「遺骨が見つかる、見つからないではなく、犠牲者に近づこうとする行為そのものが慰霊になる」と伝えた。さらに、開発業者側の意向に押されて、遺骨収集が難しくなっている状況を指摘。ふるさと納税などを活用して県有地にし、「慰霊の場」を次世代に引き継いでいく必要性を訴えた。

 参加した大学生の福島優希さん(19)は「ガマの中では、遺骨のほんのりとしたぬくもりを感じた。ここで学んだ実態をどう伝えていくか考えていきたい」。大学生の熊谷真輝さん(21)も「当事者にはなれないけれど、近づこうとすることはできることを学んだ」と語った。

 原発事故の被害を受けた福島では現在、国の政策に批判的な伝承が難しい状況が生まれている。未来塾事務局の義岡翼さん(29)は「沖縄の人たちは、ちゃんと実相を捉えて、何が起きたのかを美化せずに率直に伝えていくことを大事にしている」と振り返った。

 具志堅さんは昨年1月、福島で遺骨収集を行った際、木村さんの次女の汐凪(ゆうな)さんの大腿(だいたい)骨を発見している。

 (南彰)