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【識者談話】当事者の叫びに対応を 前泊博盛氏(沖縄国際大教授)<歩く民主主義 100の声>


【識者談話】当事者の叫びに対応を 前泊博盛氏(沖縄国際大教授)<歩く民主主義 100の声> 前泊博盛氏
この記事を書いた人 Avatar photo 南 彰

 普天間飛行場周辺の現実と政府が推進する「辺野古移設」の乖離(かいり)が浮き彫りになった調査結果だ。「20年以上たつのに」と周辺住民の間で膠着(こうちゃく)状態による諦めが広がり、「信じたいけど信じさせてくれない」という政府への不信感が伝わってくる。

 宜野湾の人たちはこれまで安全保障のための負担を背負い続けてきた。爆音はすごいストレスで「何とかしてほしい」という思いを持っているのに、飛行場閉鎖を先送りされて傷を深めてきた。それにもかかわらず、政府は平気で「あと十数年かかる」と言っている。

 そうした中、在沖米軍幹部から「軍事的に言えば普天間飛行場の方がいい」と普天間維持の本音が出てきた。今回の調査で多くの住民がこの米軍発言に反応している。政府が隠していることを知り、「辺野古賛成」の人も政府を信用できなくなっているのだろう。

 当事者としての安全保障をみることは大切で、世論調査などの数字の裏にある理由を明らかにした重要な調査だ。この当事者の叫びに、政府や沖縄県がどう民主主義的に対応するかが問われる。

 1995年の少女乱暴事件から28年がたつが、安全保障環境も国際環境も変化しているのに、公共事業に依存した利権構造が正しい判断を妨げてきた。政府は強権的な手法で進めてきたが、発想を改め、辺野古とは別に普天間返還を考えた方がいい。 (安全保障論)