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「求める人材確保できぬ」 教員採用の「秋選考」と「大学等推薦」 現役教諭や識者の声 沖縄


「求める人材確保できぬ」 教員採用の「秋選考」と「大学等推薦」 現役教諭や識者の声 沖縄 イメージ
この記事を書いた人 Avatar photo 嘉数 陽

 沖縄県教育委員会が2024年度の教員採用試験から「秋選考」と「大学等推薦」を新設すると発表した。通算15年以上の勤務経験などが求められる「秋選考」について、県教委は「豊かな経験はあるが1次試験を通過できない人もいて、経験を重視した」などと説明する。しかし筆記試験が免除されることについて、学校関係者からは疑問の声が聞こえる。 

 高校教諭の女性は「秋採用」について、「対象者がなぜこれまで試験に合格できなかったのか検証せず受け入れることになる。受験者が多忙な状況にあることを考慮したとしても、『長くやっていれば勉強しなくても大丈夫』という印象が広がってしまう」と懸念した。「大学等推薦」については、勤務経験がないにもかかわらず一部試験を免除することから、試用期間を設定して適性を見るよう提案した。

 小学校教員の女性=30代=は、教員不足への対策としては「仕方がない」と一部認めるが、「県が求めている人材の確保にはならないはずだ。免除される試験には、目指すべき子どもの将来像などが盛り込まれている。試験免除の施策はあまりやらない方がいいのでは」と疑問視した。

 小学校で10年以上臨時的任用教員(臨任)をしている男性=30代=は「正直、もう少しで筆記試験が免除されると思うとほっとする。言い訳に聞こえるかもしれないが育児もあって勉強する時間がない。現場での経験を評価してもらえるとうれしい」と話した。
 (嘉数陽)

【識者】佐久間正夫氏(元琉球大教授)
専門性の低下招く施策

 教員採用試験は教職の専門性に関わるもので、教職教養や一般教養の試験を安易に免除することは教職の専門性の低下につながる。専門職たり得る試験である必要があり、教員不足が深刻とはいえ専門性を低下させる施策は問題だ。県教委が示している「沖縄県教育委員会が求める教員像」では幅広い教養や専門性を求めており、その方針にも矛盾している。

 県は2022年、教員採用試験の受験年齢の上限を45歳から59歳に引き上げた。また県内で臨時的任用教員(臨任)の経験などがある者を対象にした1次試験(一般教養・教職教養試験)免除の資格要件を「7年間に通算5年以上」から「5年間に通算3年以上」と緩和した。

 これらの施策により何人が受験し、合格して教育現場にどんな影響があったのか。調査・公表する説明責任が教育行政には求められる。制度を変更するには、制度変更の合理的な理由がなければならない。

 確かに教員不足への対策は急務だ。しかし、急場をしのぐような施策で教職の専門性を低下させてはならない。受験者を集めるだけの施策になってはいないだろうか。

 (教育行政学)