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「2人のママ」と孫 新たな家族の絆 葛藤越え「孫は本当にかわいい」と言えるまで <ピンクドット沖縄2023>


「2人のママ」と孫 新たな家族の絆 葛藤越え「孫は本当にかわいい」と言えるまで <ピンクドット沖縄2023> 文字を書くことが好きだという綾子さん。さまざまな思いをノートに書き留めている=5日、沖縄本島中部
この記事を書いた人 Avatar photo 熊谷 樹

 LGBTQなど、性的マイノリティーを認め合う共生社会を目指すイベント「ピンクドット沖縄2023」が10日、那覇市ぶんかテンブス館前広場で開催される。13年の初開催から10年の節目。主催者は「認識は徐々にだが広がっている」と手応えを語る。一方、多様性を認め合う社会にしていくためには、周囲の人々の理解が欠かせない。娘から同性愛者であることを打ち明けられた女性の体験や、中学校で多様性への理解を広げようと模索する養護教諭の取り組みについて紹介する。


 沖縄本島中部に住む綾子さん=70代、仮名=の娘は同性愛者で、女性のパートナーと共に実子を育てている。綾子さんは「孫は本当にかわいい」と目を細めるが、娘が同性愛者であることを受け入れるには時間がかかった。

 「なぜ自分の子が」。戸惑い、自らの育て方が良くなかったのかと悩んだことも。「知人の子ならこんなに悩まない。自分の娘だからこそ、心配でたまらなかった」と振り返る。

 娘から同性愛者であることを打ち明けられたのは数年前。娘はパートナーと家族になることを決意していた。しかし、綾子さんは娘のセクシュアリティーを受け入れられなかった。自身がクリスチャンだということも背景にあった。「聖書の教えに背くのではないか」。信仰とのはざまで気持ちは揺れ動いた。

 転機が訪れたのは、娘から「精子提供を受けて子どもを産みたい」と相談された時だった。

 約40年前に1年間の育児休暇を取得するほど、子育てに力を入れてきた綾子さん。自身も経験した「子どもが欲しい」という思い。娘が同じ気持ちを抱えていたと知り、心のわだかまりが解けていった。

 綾子さんは妊活中から娘に寄り添い、出産後は2人のママと孫が紡ぐ「家族の形」を応援し続けている。

 娘は数年前からSNSなどで多様な家族の形を発信している。志を誇りに思う一方で、誹謗(ひぼう)中傷を恐れ「名前を出さないでほしい」という思いもくすぶる。そして「婦婦」として生きる娘がより生きやすい社会になるよう「LGBTQにも結婚の平等を認めてほしい」と願う。

 綾子さんは自らの経験を踏まえ、子どもにLGBTQだと打ち明けられ、戸惑う60代、70代の親が緩くつながる場が必要だと考える。「私たち世代の親は理解するのも受け入れるのも時間がかかる。少人数で寄り添い合える場があるといい」と話す。

 「裁きは神様のもの。愛と赦(ゆる)しが人間に任されたもの」という聖書の教えが今の綾子さんの心を支える。「この言葉は、拒まず受け入れなさいという教え。娘や孫の過ごす環境がいい方向に進むよう祈り続けたい」と静かに語った。 (熊谷樹)