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中学生でオーバードーズ タトゥー、シンママ、学歴ナシ…見つけた「朝キャバ」の仕事<雨のち晴れ>第1部「あき社長の奮闘」(3)


中学生でオーバードーズ タトゥー、シンママ、学歴ナシ…見つけた「朝キャバ」の仕事<雨のち晴れ>第1部「あき社長の奮闘」(3) カウンターで洗い物をする玉城あきさん。手の甲にはタトゥーが残る=2023年9月21日、那覇市松山(小川昌宏撮影)
この記事を書いた人 Avatar photo 吉田 早希

 その日は特に強い疲労感に襲われた。那覇市松山の飲食店「琉球かさ屋」代表の玉城あきさん(39)は中学生の頃、不登校だった。自宅で処方薬と市販の睡眠薬を口いっぱいに詰め込み、水で流し込んだ。「寝てる間は誰にも迷惑をかけないし、怒られない」。とにかく早く1日を終わらせたかった。母親が異変に気付き、急いで救急車を呼んだことは後になって知った。意識が戻ったのは病院のベッドの上だった。

 体につながれた複数の管に「痛い」と感じたが、それ以外、感情は湧いてこなかった。退院し自宅に戻ってからも、すぐに同じことを繰り返した。私立中学を自主退学後、地元の中学校に転入した。小学校が一緒だった子もいたが、なじめず、学校にはほとんど行かなかった。

 自宅に引きこもる生活を変えるため「心機一転、頑張ろう」と受験に臨み、高校に進学した。部活にも入ったが、睡眠薬の影響もあり、朝起きられない。過食嘔吐(おうと)も繰り返した。精神科病院にも入退院を重ね、高校2年の頃には3カ月間入院した。保健室登校やテストの別室受験を認めてくれるなど、学校側の柔軟な対応で卒業することができた。

 高校卒業後は「家にいても家族の迷惑になる」と実家には帰らず、友人の家を転々とするようになった。クラブ遊びも覚え、首や腕などにタトゥーを入れた。自らの将来像は描けず、空虚感がついて回った。

友人と写真に納まる28歳の玉城あきさん=2012年12月(本人提供)

 28歳で結婚し、出産するも、直後に離婚した。当時仕事に就いていなかったため、すぐに働き口を探す必要があった。求人誌を開き、隅から隅まで目を通した。「タトゥーのある見た目で、学歴や職歴もない。加えてシングルマザーで幼い子どもがいるとなると、働ける場所はなかなか見つからなかった」。なんとか見つけたのは、早朝に開店するキャバクラ、いわゆる「朝キャバ」の仕事だった。

 当時は収入が不安定だったため借金があった。生活費と借金返済のため、朝と夜のキャバクラを掛け持ちするようになり、1日中働き続けた。昼間は保育園に子どもを預け、夜は夜間保育を利用し、生活をつないだ。体力的にも厳しかったが、借金の数字が少しずつ減っていくことがやりがいになっていた。

 (吉田早希)


<メモ>オーバードーズ(OD)

 用法や用量を守らずに大量の医薬品を服用すること。薬の過剰摂取。厚生労働省研究班の調査によると、2021年5月~22年12月、市販薬の過剰摂取で全国7救急医療機関に救急搬送された人は122人で平均年齢は25・8歳。女性が約8割を占めた。現実逃避などを目的に若者の間で広まり、救急搬送されるケースが相次ぐなど深刻な問題となっている。