支援を必要とする若者や女性に、直接向き合う民間団体の存在は欠かせない。シングルマザーを巡る社会問題について、県内で長年活動する「しんぐるまざあず・ふぉーらむ沖縄」の秋吉晴子代表に聞いた。
―支援する側の課題は何か。
「接客アルバイトの方が、昼の事務職に就きたいと希望したので、パソコンを貸与し資格が取れるよう講座を開いている。まったく未経験の分野への挑戦となるので、丁寧に話をして働く姿をイメージしてもらう。スタッフはチームとなって支えている。支援する側も真剣だ」
「講座を開くだけでは誰も申し込まない。継続して話を聞くための居場所も必要で、そのためにはスペースを確保しないといけないし、駐車場も必要だ。スタッフの人件費もある。1人の人間を支援し収入アップにつなげるのはとても大変なことで、時間も費用もかかる。効率が悪いかもしれないが、それでも一人一人やらないといけない」
―一人一人を支援するだけでなく、社会全体を変える取り組みも必要だ。
「シングルマザーサポート団体全国協議会に参加している。シングルマザーの抱えている課題や困り感は、あまり改善されていないというのが団体の共通認識だ。結局はジェンダーの問題。家父長制が根底にあり、今のシングルマザーの貧困や生きづらさにつながっている」
「ひとり親に対する社会の視線もある。『子どもがいるのになぜ離婚したの』とか、『何で出産したの』と言われる。本人に非はなく、意識していなかったとしても、周囲が非難することで自分の中に内在化する。子どもに申し訳ないという気持ちが生まれると、お母さんも子どもも後ろめたさを感じてしまう」
「院内集会を開いて政策提言もしている。2020年度税制改正では婚姻歴があるひとり親に向けた『寡婦控除』を『ひとり親控除』に見直し、未婚の親も対象になった。改正を求める活動は沖縄から始まり、全国のシングルマザー支援団体とつながった。法律や行政の不備、制度のひずみをしっかり取り上げ、変えていく取り組みも必要だ」
(聞き手・稲福政俊)
あきよし・はるこ 大阪府出身。1999年に沖縄に移り住み、法律事務所にパラリーガルとして長年勤務した。2004年にしんぐるまざあず・ふぉーらむ沖縄を立ち上げ、ボランティアで支援を続ける。子どもシェルターおきなわ理事も務める。