宮崎市佐土原町の温泉に向かう途中、松が枯れているのが気になりました。害虫か病気でしょうか。 宮崎市下北方町・男性(76)
投稿した男性(76)が気にしていたのは、宮崎市佐土原町下那珂の温泉施設「市石崎の杜歓鯨館(かんげいかん)」周辺の松林だった。「何か手を打たないと、どんどん広がってしまうのでは」と心配になったという。
現地に向かうと、茶色に変色している松が目についた。ドローンで空撮すると、温泉施設の北を流れる石崎川の先まで松が枯れているのが分かった。
松林は宮崎森林管理署が管理する「明神山国有林」(130・55ヘクタール)で、担当者によると、原因は松くい虫(マツノマダラカミキリ)だった。一帯は2022年度も枯れ、1884本を伐採。本年度も同程度の伐採を見込んでいる。
被害、他の地域でも
宮崎市沿岸部では、宮崎県総合自動車運転免許センター周辺の「前浜国有林」(33・31ヘクタール)と、明神山(みょうじんやま)国有林の北部にある「廣瀬川国有林」(38・75ヘクタール)でも被害が出ている。三つの国有林で枯れた松は20年度70立方メートルだったが、21年度378立方メートル、22年度1022立方メートルと増加している。
宮崎県内全域でも、ここ数年で被害は増えている。民有林と国有林を合わせた被害総数は13年度以降、最も少なかった18年度の約千立方メートルから増加に転じた。21年度は約1700立方メートル、22年度は約2200立方メートルと拡大している。同署の後藤善史総括森林整備官は「増加の原因は分かっていない」という。
破砕や焼却で対策
被害防止に向けて同署や県はヘリコプターや地上から薬剤を散布するほか、枯れ木の伐採に取り組んでいる。今後も被害が拡大すると見込み、11月からは枯れた松を伐採した後に、破砕や焼却して内部に潜む松くい虫を全滅させる「特別伐倒駆除」も予定する。
宮崎県の沿岸部には塩害や強風を防ぐため、松の植栽が進んだ。人工林の松類の面積は1万3223ヘクタールで九州最大。宮崎大農学部の平田令子准教授(森林保護学)は「宮崎を代表する景観となっている。被害を完全になくすことは難しく、どこまで許容するかが重要」と指摘。「保全地域の区分けや、保全しない場所は樹種転換について考えてほしい」と投げかけている。
(宮崎日日新聞)
松くい虫 松くい虫の成虫がマツの若枝を食べる際、体内にいる線虫・マツノザイセンチュウが樹内に侵入して松枯れが発生する。線虫が木の中で増殖、活動し、松から出る防御物質によって通水阻害を起こして衰弱、枯死につながる。