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<泉惠得さんを悼む>大山伸子(沖縄キリスト教短期大学名誉教授) 努力する不屈の精神


<泉惠得さんを悼む>大山伸子(沖縄キリスト教短期大学名誉教授) 努力する不屈の精神 歌声を披露する声楽家の泉惠得さん=2015年
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 泉先生とは同じ音楽教育に携わる者として、以前からご指導いただいていたが、宮良長包研究という共通のテーマを持ってからはさらに関わることが多くなった。研究者として教育者としての立場もあり、声楽家なので言葉と歌詞にとてもこだわって、長包の曲分析を深く追究していらした。

 ある時突然「議論しませんか」と電話がかかってきて、そして長包音楽の解釈を巡って熱弁を振るう。そのやりとりも私の中に深く刻まれている。電話口であの美しいテノールで歌い始め、『例えば、ここはこうだから』と言って歌われる。とても論点がはっきりしていて説得力があった。

 絶えず努力をする不屈の精神が先生の中にきっとおありで、学生にも私たちにも、人生の目標に向かって一生懸命努力する人を励まして応援する。さらに自分自身にとても厳しかった。琉球大学の教授を退官後も「現役を一生貫くんだ」と話して毎年、ソロリサイタルをして、海外にも遠征した。来月もリサイタルを開催する予定でとても張り切っていらした。

 特筆すべきは2018年に宮良長包協会を設立し会長を務め、宮良長包の生誕日、3月18日を「宮良長包の日」と制定してユニークなコンクールもなさり、後進の指導にも意欲的だった。宮良長包の音楽に尊敬の念を持って演奏や指導を行っていた姿を、私はずっと先生の生きざまとして見ていた。そういう先生だから、まだまだやりたいことがたくさんおありだったと思う。道半ばと言ってもいいのかもしれない。とても残念です。ご冥福をお祈りします。

 (談、沖縄キリスト教短期大学名誉教授、宮良長包研究者)