琉球を中心とした東アジア交流史の研究に取り組み、第41回東恩納寛惇賞に選ばれた元琉球大教授の真栄平房昭さん(享年67)=那覇市出身。人、モノ、情報が国境と海を越えて動く「海域世界」に着目し、一国の歴史にとどまらない横断的な研究を展開した。
真栄平さんの父房敬さんは歴史学で知られ、房昭さんも東アジア史に関心を持った。高校生の時に体験した沖縄の日本復帰にも影響を受けた。「国境が持つ意味や役割が時代の状況に応じて変化し、そこから新たな歴史が生まれてきた」と実感した。
妻富美子さんいわく、真栄平さんは「研究一筋」。「2回人生を繰り返しても足りないくらい書きたいことがある」と語っていたという。琉球士族の土地所有は国内外への役務経験が基準だったという「旅役知行制」を提唱するなど、近世史研究を前進させた。
神戸女学院大で26年ほど教えた後、2014年に琉球大教授に着任。肺がんが見つかり20年3月に早期退職した。同年、真栄平さんを元気づけようと仲間が協力し、論文集「琉球海域史論 上下巻」が発刊された。
後年は琉球併合(「琉球処分」)などを問い返し、琉球・沖縄の主体性を追求する研究にも取り組んだ。富美子さんは「研究の底流には父房敬さんの家族が沖縄戦で不条理な死を遂げたことがあったのでは」とおもんぱかる。寛惇賞受賞に「生きていたらどんなに喜んだか。周りの研究者に恵まれていたからここまでこられた」と感謝した。
(伊佐尚記)
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選考委員は赤嶺政信琉球大名誉教授、赤嶺守名桜大大学院教授、上原靜沖縄国際大名誉教授、豊見山和行琉球大名誉教授、鳥山淳琉球大教授が務めた。