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埼玉、故阿波根昌鴻さん収蔵の写真展 沖縄・伊江島の戦後 鮮やかに 丸木美術館


埼玉、故阿波根昌鴻さん収蔵の写真展 沖縄・伊江島の戦後 鮮やかに 丸木美術館 「阿波根昌鴻 写真と抵抗、そして島の人々」の企画をした小原真史東京工芸大准教授=25日、埼玉県東松山市の丸木美術館
この記事を書いた人 Avatar photo 斎藤 学

 【埼玉】伊江島の反戦平和活動家の阿波根昌鴻さんを、写真家としても再評価する企画展が埼玉県東松山市の「原爆の図丸木美術館」で開かれている。阿波根さんが収蔵していたネガを高精細にデジタル化してプリントした写真350点が会場にずらり。米軍の銃剣とブルドーザーで踏みつけにされ、占領された「人間の住む島」の戦後の光景を鮮やかによみがえらせた。

 5月6日まで開催される企画展は「阿波根昌鴻 写真と抵抗、そして島の人々」がテーマ。東京工芸大の小原真史准教授(45)らが企画した。展示写真の数々は、伊江島に保管してあった約3千枚のネガのうち2600枚を、昨年8月に小原さんらが機器を持ち込み、新たにデジタル化したという。

 小原さんは「写真だけを見ても素晴らしい」と話し、文章や物の収集の記録に加え、撮影した多くの写真の記録性に着目している。

 阿波根さんの写真展が県外で開催されるのは初めてで、今回の企画展では1955年から67年までの写真を年代に沿って展示している。4章に分けており、1章は「銃剣とブルドーザー」で米軍のブルドーザーが家屋などを踏みつぶしたわだちの、鮮明な写真などから始まる。2章が「土地闘争の記録」、3章が「戦場になった島」と続く。

 4章は企画展の中でも出色。「人間の住んでいる島」として島の主役である住民の肖像が数多く並んだ。中には島に激励に訪れた、国会議員になる前とみられる浜田幸一さんと住民の集合写真もある。

 小原さんは「占領下の55年当時、村内でもたった1台のカメラを阿波根さんが手に、米軍の言い分のままにならないようにと、抵抗する手段として非暴力の行動を記録してきた。史実がねじ曲げられないように住民側から撮った初めての記録写真だ」と、阿波根さんの写真家としての足跡も評価した。

 (斎藤学)