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石垣駐屯地開設1年 変わる光景、軍事加速 自衛隊に賛否、揺れる住民


石垣駐屯地開設1年 変わる光景、軍事加速 自衛隊に賛否、揺れる住民 小銃を手に警備する自衛隊員=13日、石垣駐屯地
この記事を書いた人 Avatar photo 照屋 大哲

 石垣市平得大俣に陸上自衛隊石垣駐屯地が開設してから16日で1年。開設後、街中では軍事車両や迷彩服姿の隊員が行き交う。陸自オスプレイの県内初飛来、日米共同訓練実施、米艦船寄港―。開設後に島で「加速」する軍事的な動きに、住民は「こんなはずじゃなかった」と懸念を募らせている。この1年で変化した光景への違和感、有事への危機感、災害対応への期待感。自衛隊を巡りさまざまな思いが交錯している。

 「昔はのどかな風景だった」。長年、市内で自営業をしていた70代男性は自衛隊車両や迷彩服姿に「違和感」を感じている。男性は市長選で、自衛隊配備を容認する中山義隆市長に投票してきた。人間関係が濃密な島社会の空気が投票行動に影響する。それでも、島の光景が変わり有事があおられ、不安が募る。「戦争は怖いよ。こんな小さな島に基地はいらない」。「平和な島」を願い静かな声で言葉をつむいだ。

 子育てに追われる狩俣優美(ゆうみ)さん(40)はかつて、自衛隊に「肯定的」な立場だった。選挙も自衛隊に好意的な保守系候補に投票してきた。意識が変化したのは娘を出産した2019年。新型コロナ禍だった。娘が感染しないように情報収集を始めると、自衛隊配備など社会問題も見聞きするようになった。駐屯地が開設し「戦争が来るんじゃないか」と「危機感」を持った。識者らを招き社会や憲法についての「お話会」を開催した。

 夫は建設関係の仕事で、自衛隊への考えは夫婦間で違う。島内でも自衛隊に賛否があり「ギスギスして」話題にしづらくなってきた。駐屯地は現在も施設の工事が続き、拡張予定。島や自然を「これ以上破壊しないでほしい」。「もういいよと思ったら国の思うつぼ」。今後も自分にできることをやっていく。

 市内の畜産農家、川満俊二さん(41)は自衛隊配備を好意的に受け止めている。島には隊員の家族もいる。この1年、地域行事などでの交流を通じて「親近感が湧いてきた」。軍事車両や迷彩服姿に「走ってもらってかまわない。自衛隊は領土を守っており、隠す必要はない」と言い切る。台湾有事や災害対応で自衛隊は「必要」だと感じ、島を守ることに期待感を抱いている。

 (照屋大哲)