prime

「抑止力は必要、でも…」 元自衛官、募る懸念 平穏な生活環境を <日常を守る・うるま陸自訓練場断念を求めて>中


「抑止力は必要、でも…」 元自衛官、募る懸念 平穏な生活環境を <日常を守る・うるま陸自訓練場断念を求めて>中 うるま陸自訓練場,連載:日常を守る・うるま陸自訓練場断念を求めて
この記事を書いた人 Avatar photo 金盛 文香

 防衛省が陸上自衛隊の訓練場整備を計画している、うるま市石川のゴルフ場跡地は住宅街と隣接している。予定地から500メートルほどの距離に自宅がある安田公さん(63)は元自衛官だ。「防衛力強化は支持する」立場。それでも「住宅も教育施設も近い。なぜここなのか」と計画の断念を求める。安田さんが抱く懸念は周辺住民も感じていた。自衛隊の拡張に関する考えはさまざま。だが「なぜ、生活に近い場所に」という疑問が一致点となり、計画断念を求める声は立場を超えて広がった。

 「東アジアの緊張感が高まる中、抑止力が必要なのも、訓練場が必要なのも分かる。でも―」。元自衛官としての考えと、そこに生活する者としての思いがぶつかる。

 1989年、東山に家を建てた。幼かった長男を連れ、家族3人で移り住んだ。「自分の城だからね」。引き渡しの時のうれしさは今も覚えている。家族は増え、成長し、今では孫が週に1回遊びに来る。

 約20年間、旭区自治会の評議委員を務めている。地区のイベントを企画・運営するなど地域を盛り上げ、作り上げてきた。「平穏に過ごしてきた。いいところなんだよ、ここは」。地元への思いは強い。

 2月11日、防衛省が地元住民向けに開いた説明会に参加した。「東山でないといけない根拠は示してない」と納得できなかった。「地域を無視したやり方。強行的すぎる」。

 住民は立場を超えて計画反対でまとまり、市や県議会などでの与野党を超えた一致につながった。2月16日に石川出身のうるま市議が、同24日に旧石川市の市議OBが、与野党を超えて計画への反対を表明した。

 さらに県議会では3月7日、与野党が全会一致で計画の白紙撤回を求める意見書を可決した。政府が安全保障関連3文書で南西諸島の防衛力強化の方向性を示して以降、自衛隊施設の新設に対して与野党が一致するのは初めてだ。

 しかし、防衛省は計画の見直しに動きつつも「白紙撤回の考えはない」としている。安田さんは「平穏な生活環境を守りたい」との思いを最優先する。白紙撤回に向けた動きは広がり、「希望はまだ捨ててない」と行動を続ける。

(金盛文香)