はしか「予防接種を」 全国最下位 県が大流行警戒


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はしか「予防接種を」 全国最下位 県が大流行警戒 イメージ
この記事を書いた人 Avatar photo 嘉陽 拓也

 東京都や奈良県などで、感染性の強い麻しん(はしか)が確認されたことで、二十数年前に乳幼児9人が命を落とした大流行を経験している沖縄県は警戒感を強めている。感染対策の要になるワクチンの接種率は全国最下位。集団発生のリスクがある現状に、県立中部病院感染症内科の椎木創一医師は「既往歴を確認し、必要ならワクチン接種を検討してほしい。1歳からしか打てないため、妊娠の予定がある人は赤ちゃんを抗体で守るため妊娠前の接種を勧める」と呼びかける。

 麻しんは感染後約10日間の潜伏期間を経て高熱や風邪症状になり、ほほの粘膜に灰白色の小斑点が現れる。空気感染で広がるトップクラスの感染力で、医療用のマスクでも防げないという。

 県内では1999年と2001年の流行で3500人以上が感染し、脳炎や肺炎で乳幼児9人が亡くなるなど「発展途上国並みの被害」と言われた。

 その後、関係機関で「はしかゼロプロジェクト委員会」を設置し予防策を強化したが、18年3月、外国人観光客を発端に約2カ月間で101人が感染する集団発生が起きた。同年6月に終息したが、観光への影響は大きく旅行のキャンセルは計746件(5572人)、損害額は4億1955万円と試算された。

 厚労省の22年度都道府県別麻しんワクチン接種率によると、沖縄は第1期(満1歳代)89・1%、第2期(小学校入学の前年)85・7%と全国で最も低い。

 集団免疫を確保するには95%以上の接種率が求められるため、県は市町村に接種の推進を周知している。

 麻しんの怖さには数年の潜伏期間を経て発症する指定難病「亜急性硬化症全脳炎(SSPE)」がある。発症率は、り患者の数万分の1と言われるが、ウイルスが脳内で変異することで知能や運動の障害が進行し、命を落とすことにもつながる。

 椎木医師は「ワクチンを2回接種すればり患する可能性を95%減らせる。未接種者が多いほど大規模な流行につながるため、自分と周囲を守る対策をとってほしい」と語った。

(嘉陽拓也)