「『沖縄=安い』と思ってほしくない」 北欧から読谷に移住「ザイノウエブラザーズ」代表・井上聡さんの挑戦 


「『沖縄=安い』と思ってほしくない」 北欧から読谷に移住「ザイノウエブラザーズ」代表・井上聡さんの挑戦  琉球藍研究所とザイノウエブラザーズがコラボレーションして今春から販売する藍染めの洋服を手にする井上聡さん=読谷村(ジャン松元撮影)
この記事を書いた人 アバター画像 梅田 正覚

 デザインを通して社会課題を解決する「ソーシャルデザイン」を実践する北欧デンマーク発の企業「ザイノウエブラザーズ」代表の井上聡さん(45)が2022年から読谷村に移住し、貧困や低賃金の産業構造など、沖縄の社会課題解決に向けた新たな試みを始めている。

 04年に起業した同社は、上質な毛を持つアルパカを育てているにもかかわらず、知識不足から仲買人に安く買いたたかれていた南米アンデス山脈の遊牧民を支援するプロジェクトに取り組んできた。原料を公正な価格で買い取るフェアトレードで、高価格帯のニット製品に加工して欧米に展開。日本国内でも沖縄を含む85店舗で販売する。

 井上さんは日本人の両親の下、デンマークのコペンハーゲンで移民の子として生まれ育った。白人社会のデンマークで日常的に差別を受けた上、両親の故郷の日本を訪れても居場所はなかった。だが、「琉球」と「日本」の文化が混ざり合う沖縄に居心地の良さを感じ「やっとホームを見つけた感じがする」と語る。

 今年、デンマークの拠点を全て閉鎖して沖縄に本拠を移すことを決意。県内でも昨春からソーシャルデザインのプロジェクトを開始した。

 沖縄の伝統工芸品、琉球藍の染織物を保存継承に取り組む琉球藍研究所(豊見城市、嘉数義成代表)を支援する。同研究所は原料が不足する琉球藍を本島北部で自ら栽培し、染料を抽出してアートや洋服を製作する。3月末に「藍染めをストリートに」をコンセプトにした、琉球藍で染めた高価格帯の洋服をザイノウエブラザーズのサイトで販売する。

 井上さんは「ゼロから沖縄のカルチャーを守ろうとする若いウチナーンチュの職人をかっこいいと感じた」と支援を始めた理由を説明。その上で「『沖縄=安い』と思ってほしくない。藍染めの製品をフェアな価格で販売する。沖縄のカルチャーを支えつつ、貧困問題の改善につなげたい」と語った。

 (梅田正覚)