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我部政男氏が蔵書3万冊、台湾大学に寄贈 「沖縄研究所の設立に期待」 日本近代史研究者


我部政男氏が蔵書3万冊、台湾大学に寄贈 「沖縄研究所の設立に期待」 日本近代史研究者 台湾大学に寄贈された我部政男氏の3万冊超の蔵書(本人提供)
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 沖縄と台湾との学術・文化交流を推進しようと、県出身で日本近代史研究者の我部政男氏(85)がこのほど、日本・沖縄近代史関係の蔵書3万冊超を台湾大学に寄贈した。台湾大は戦前の台北帝国大時代から受け継ぎ、1930年代から琉球王国時代からの史料などを所蔵している。約100年をかけて沖縄関係史料をそろえてきた。

 同大図書館の陳光華(チェングゥァンファ)館長は「今後、台湾大で沖縄研究所の設立に可能性を与えた」と述べた。6月12日に同大で贈呈式を開く予定。

 我部氏はこれまで蔵書を本部町の自宅に保管していたが、「他界したら、本の処理に家族が困る」とし、2019年ごろから寄贈先を探し始めた。

我部政男氏
我部政男氏

 当初、日本国内の大学に働きかけたが、「図書の整理費用がない」などを理由に断られたという。ちょうど、その時期に県立博物館・美術館で「台湾展」(2019年)が開催され、見学していたら台湾への寄贈も視野に入ってきた。琉大在職中は、頻繁に台湾を訪ねたことがあり、親しい友人もできていたことで、台湾への寄贈の決意を強めた。

 同展を企画し、台湾留学経験があり、教え子でもあった久部良和子氏に、受け入れ先の交渉を依頼した。最終的に我部氏の台湾の知人でもあり、前台湾大教授の呉密察(ウミィチャ)さんが仲介役となり、同大への寄贈を決めた。

 我部氏は「無条件に蔵書を受け入れていただいたことに対し、深い敬意と感謝を表したい」と話し、「将来、台湾大学に沖縄研究所ができることを期待している」と展望を語った。

 我部氏は本部町生まれ、現在は東京に在住。琉球大教授、山梨学院大教授などを務めた。琉球処分(琉球併合)や沖縄戦など沖縄近現代史に関する著作も多い。22年に第39回東恩納寛惇賞を受賞した。

(呉俐君)