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訓練成果を発揮 空港やホテルで迅速誘導 施設外への情報提供に課題 <検証 津波避難>4


訓練成果を発揮 空港やホテルで迅速誘導 施設外への情報提供に課題 <検証 津波避難>4 津波警報を受けて、3階で避難を続ける空港利用客ら=3日、那覇空港
この記事を書いた人 Avatar photo 與那覇 智早

 「全員3階に避難してください」。3日午前9時すぎの那覇空港では、津波警報の発表を受けて、那覇空港ビルディング(NABCO)や航空会社の職員らが利用客の誘導を始めた。同時刻から多くの便が運航を見合わせ、少なくとも100便が欠航、1万5619人に影響があった。多くの観光客は所狭しと待機し、振替便の情報などを待った。

 沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)によると今回、避難指示を受けた観光事業者らの誘導は速やかで、特にトラブルなどはなかったという。OCVBでは職員らが建物の4階に避難しながら、観光客向けにSNSやウェブサイトで情報を発信した。OCVBは毎年、市町村の観光協会や観光事業者らを集めて観光危機管理の図上訓練を行っており、今回は訓練の成果が生かされた。

 1階が海抜4メートルほどの名護市のかりゆしLCHリゾートオンザビーチでは、大津波を想定した避難訓練を年に2回行っている。今回の警報発表ではホテルの3階以上への移動を呼びかけ、心配な人には徒歩で10分ほどの場所にある海抜30メートル以上の沖縄かりゆしビーチリゾート・オーシャンスパまで誘導、大きな混乱はなかったという。

 上間信作総支配人は「警報を聞いて部屋から飛び出してくる人や、部屋をノックしても出てこない人などもいたが、訓練と同じように速やかに誘導できた。桟橋に係留している船を沖合に逃がすなど、津波の予想到達時刻までにもいろいろできた」と振り返った。

 那覇市内の海沿いのホテルでは、多言語で館内放送をしてホテルの5階以上への避難を呼びかけ、最上階(12階)のバーとフィットネスジムに宿泊客を誘導した。混雑回避と安全確保のため、チェックアウトの時間を2時間遅らせ、午後1時まで無償で延長。警報発表中のチェックアウトは受け付けなかった。

 観光危機管理に取り組むサンダーバードの翁長由佳代表は、空港やホテル、観光施設の避難誘導対応を評価する。一方で、土地勘のない観光客が街中で被災した場合、対処方法が分からなくなる可能性があることを指摘する。「観光施設以外の街中にいる人への情報提供がまだまだだ」と課題を挙げ、多言語やピクトグラム(絵文字)などでの表示を設けることを提案した。

 (與那覇智早)