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住民懸念「戦争つながる」 波照間空港、特定利用で意見交換会 沖縄


住民懸念「戦争つながる」 波照間空港、特定利用で意見交換会 沖縄 前泊正人町長(手前)に質問する住民=8日、竹富町波照間島の農村集落センター
この記事を書いた人 Avatar photo 照屋 大哲

 自衛隊や海上保安庁の利用円滑化を前提に、政府が特定の空港や港湾を優先的に整備する「特定利用空港・港湾」事業を巡り、竹富町の波照間空港が候補に挙がっている件で、前泊正人町長は8日、住民との意見交換会を波照間島内の農村集落センターで開いた。

 約50人が参加した。「賛成」「反対」「決められない」。参加者はそれぞれの思いを吐露した。人口462人(1月末時点)の島が国策で揺れている。

 冒頭、町側が特定利用事業の概要を説明した。山城秀史副町長は昨年10月に国の関係者が二十数人で町に説明に来たことを住民に改めて伝えた。国から具体的な説明はなかったが「波照間空港が(指定)候補になっていることは事実だ」と述べた。町内の港湾は指定しない考えを、国側から伝えられたことも明かした。

 「自衛隊や海保の利用で騒音が心配だ。事故が起きたら漁業にも影響する」。質疑応答で波照間純一さん(74)が最初に挙手し、滑走路延長による軍事的訓練の増加を懸念した。ある女性は「この島は戦争マラリアがあって、戦争の記憶が色濃く残っている。こういう動き(特定利用)は戦争につながる」と憂いた。島で3人の子を育てる宮里望美さん(36)も続いた。「戦争で島が潤うことを子どもたちに引き継ぎたくない。そもそも戦争ありきの国の姿勢が問題だ」と声を詰まらせた。

 波照間公民館館長の仲底善章さん(67)も、館長ではなく個人の意見として「滑走路延長は自衛隊と関係なくやってほしい。自衛隊は反対だ。沖縄戦はなんだったか。軍隊は住民を守らない」と強調した。

 一方、親盛早人さん(54)は「賛成」の立場で意見を述べた。「滑走路が伸びるのであれば有事の際に自衛隊が使ってもいい。私と同じ考えの人は少なからずいる」と訴えた。

 賛否の意見が出る中、「新聞を読んで毎日考えているが、賛否は決められない。揺れ動いている」と悩める胸中を打ち明ける人もいた。
 前泊町長は自身の賛否は明言せず「声に出せない声も受け止める。私が独断で決めることはない」として、今後も住民の意見に耳を傾けていく姿勢を示した。 

(照屋大哲)