有料

【経緯図あり】うるま陸自訓練場計画断念から1カ月 記録集を発刊へ 住民、最後まで一丸、後世へ 沖縄


【経緯図あり】うるま陸自訓練場計画断念から1カ月 記録集を発刊へ 住民、最後まで一丸、後世へ 沖縄 運動を振り返る伊波常洋共同代表(左)と伊波洋正事務局長=10日、うるま市の石川部落事務所
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報朝刊

 うるま市石川への陸上自衛隊訓練場の整備計画を巡り、木原稔防衛相が計画断念を表明してから11日で1カ月がたった。住民運動を展開してきた「自衛隊訓練場設置計画の断念を求める会」は取り組みを後世に残そうと、記録集を発刊する予定だ。「求める会」の中心となった伊波常洋共同代表(73)と伊波洋正事務局長(71)は、住民が一丸となって意思を示し、最後まで貫いたことを誇り「今後、住民が反対するような出来事が起こった際、運動の参考になればいい」と語る。

 予定地の石川は「宮森小ジェット機墜落」があった地だ。洋正さんは、凄惨な米軍機事故を語り継ぐ「石川・宮森630会」としても活動する。「事故を繰り返してはいけない」との思いは住民の中にも息づいていた。
 「求める会」にとっても630会の存在は大きかった。当事者の声を集めて公的機関に掛け合うことや、イベントの段取りなど「培った方法を生かしてくれた」(常洋さん)

 一方、常洋さんはこれまで自民党県連の政調会長や県議会米軍基地関係特別委員長を務めた元政治家。政治的スタンスを超えた運動の展開を大きく後押しした一人だ。

 金武町のキャンプ・ハンセン内の米陸軍都市型戦闘訓練施設での訓練強行に対し、超党派の抗議集会が開かれた2005年、常洋さんは県議会米軍基地関係特別委の委員長だった。住民の声を聞き、一緒になって施設移転を実現させた。「金武の時も命どぅ宝と住民運動で要求を実現させた。今回も生活に関わる問題だから住民が一つになった」と振り返る。

 今回の「求める会」には金武町の区長会も参加した。訓練場整備予定地が金武町にも近いこともあったが、常洋さんは「区長も都市型訓練施設の時のことを覚えていた」と協力の連鎖を実感する。

 過去の経験を生かし、市民の要求が実現された今回の運動。手順を踏まず、住宅地のそばに訓練場を整備しようとした防衛省のずさんな計画に、常洋さんは「全くの暴挙」と指摘する。

 地元旭区の住民でもある洋正さんは「地元が曖昧な立場だとうまくいかない。旭区が最後までしっかり反対を貫いた」と土台となる声は強固だった。「求める会」の立ち上げは、地元自治会を支える目的もあった。

 防衛省の断念表明後、「求める会」には県内外から講演や原稿の執筆依頼が来ている。洋正さんは「考えていた以上に今回の闘いはいろんな団体に影響を及ぼした」と語る。「検証して残しておかないと」と記録集の発刊を決めた。

 「求める会」は8月に解散予定だ。常洋さんと洋正さんは「いったんは解散するが、今後沖縄各地で、住民が一つになって反対するのであれば協力していく。何かの運動の役に立てればいい」と思いを話した。
 (金盛文香、玉城文)