prime

「宮森の二の舞にしてはいけない」 事故の体験者、消えぬ記憶 住民無視に怒りにじませ<日常を守る・うるま陸自訓練場断念を求めて>下


「宮森の二の舞にしてはいけない」 事故の体験者、消えぬ記憶 住民無視に怒りにじませ<日常を守る・うるま陸自訓練場断念を求めて>下 「宮森の二の舞にしてはいけない」と話す佐次田満さん=2月27日、うるま市石川東山区内
この記事を書いた人 Avatar photo 金盛 文香

 防衛省がうるま市石川のゴルフ場跡地に整備を計画している陸上自衛隊訓練場では、緊急時などのヘリ飛行が想定されている。「火が燃えているところを逃げ回った。その光景が重なる」と話すのは1959年に旧石川市の宮森小に米軍のジェット機が墜落した事故の体験者・佐次田満さん(75)だ。「宮森の二の舞にしてはいけない」と力を込める。

 訓練場予定地がある旭区と東山(あがりやま)区は宮森小学校の校区だ。佐次田さんは東山区に住む。「宮森小の通学地域に造るとは…」。佐次田さんは小学5年生の時の米軍ジェット機墜落事故を思い出し、ため息が出た。

 ジェット機は佐次田さんがいる校舎に突っ込んだ。「こんなに揺れるか、というくらい揺れた」。外に飛び出すと「天まで焦がすような炎」が見えた。目の前を腰のベルトだけが残った黒焦げの男の子が運ばれていった。「忘れたくても消せない」記憶だ。

 計画断念を求める声が広がる中に、「事故を繰り返したくない」という思いは息づく。2月1日に石川地区の自治会長連絡協議会、3月1日に市内全63自治会が加入する市自治会長連絡協議会が反対を表明した。

 両団体は、県知事や沖縄防衛局に計画断念を要請した際、悲惨な事故が想起されるとして断念を求めた。現在、中村正人うるま市長、玉城デニー知事も区民に賛同し断念の要求は島ぐるみの様相を呈している。

 それでも防衛省は公式見解としては「白紙撤回の考えはない」とする。宮森小の事故の記憶が消えない石川地域。「地域の状況を調査していれば、こんな計画は考えられない。悲しいというか、悔しいというか…」。いろんな感情が交じる。「国の考え方は住民とずれている。沖縄のことを差別的に見ていないか」と怒りもにじませた。

 佐次田さんは40代半ばまで「思い出すのがつらいから」と事故の体験を話すことはなかった。しかし、繰り返される基地から派生する事件事故に「言わないと、なかったことにされてしまう」と重い口を開き始めた。「事故は二度と起こってほしくないし、起こしてはいけない」。その思いを胸に20日、市民集会に参加する。

(金盛文香)